【コラム】KANA-BOON、ロックの原体験=『Origin』という発見について

【コラム】KANA-BOON、ロックの原体験=『Origin』という発見について

僕がKANA-BOONのライヴを初めて観たのは、2012年春、キューンレコード20周年企画の一環で彼らがオーディションのグランプリに輝き、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのオープニングアクトを務めた時だった。キャッチーなメロディやリフがぎっちぎちに詰め込まれていて、これこそ2010年代ロックの機能性だ、と驚かされたのを憶えている。

普通、若いミュージシャンは技術の拙さを強烈な表現衝動でカヴァーするもので、ロックバンドのような生演奏スタイルはまさにうってつけなのだけど、KANA-BOONはそうじゃなかった。徹底的に人懐っこい音と言葉で楽しませて、踊らせる。ミュージシャンとしてのプロ意識が異様に高くて、だから機能的だったし、あっという間に人気者になった。あの4人の、とりわけ谷口鮪(Vo・G)の、音楽で生きていく、という覚悟の賜物だろう。

以前、KANA-BOONの武道館ライヴ映像作品について書いたコラム(http://ro69.jp/news/detail/130870)でも触れたことだが、“生きてゆく”や“シルエット”あたりを境に、KANA-BOONの感情表現は格段にふくよかなものになった。ライヴ演奏も同様だ。普通ならエモーションありきのロックだが、KANA-BOONは音楽の機能性が先にあって、感情表現は後から追いついてきたのである。

そこで、最新アルバム『Origin』である。機能性とエモーションを手にした彼らは、ロックの感動の原体験を、そしてバンド活動のモチベーションを、掘り起こそうとしている。これは、例えばベテランアーティストにとっての原点回帰とは意味が違う。最初からプロフェッショナルで、感情が後から追いついたKANA-BOONは、ロックの鮮烈な原体験を自分たちで描いたことがなかったのである。言ってみれば、原体験を「発見した」ということだ。

現在発売中の『ROCKIN’ON JAPAN』3月号では、谷口鮪の『Origin』インタヴューと小泉貴裕の個別キャリアインタヴューが掲載されていて、谷口は原点を確認する必要性と経緯についてシリアスに語っている。僕は、『Origin』のディスクレヴューを、「KANA-BOON史上最高に歌詞が良い」と書き出している。作詞の技術的な部分もさることながら、何よりも「わかる」からだ。ロックの原体験、その鮮烈な感動は、ロックが好きな人なら誰にでもわかるし、これからロックを好きになる人にとっての重要なきっかけを作ってくれる。多くのリスナーに向けて開かれた、そして今後のKANA-BOONのキャリアの中でも大きな意味を持つはずの傑作である。(小池宏和)

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