【ライヴレポ】さユり、メジャーデビュー後初ワンマンで「2.5次元」の先へ踏み出す!

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さユりが、4月23日に渋谷WWWでワンマンライヴ「ミカヅキの航海」を行った。RO69では、この模様をライヴ写真とレポートでお届けする。

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「あなたは、どうしてここに来ましたか? どこに向かうために、私の歌を聴きにきましたか? 私は今日、あなたに聴いてもらうために、ここでライヴすることを決めました。何にもできないけど、それでも自分のこと、世界のこと、好きになりたくて、歌いに来ました」……舞台と観客の間を遮る薄い紗幕越しに、“酸欠少女”さユりは満場のオーディエンスへ静かに、しかし真っ直ぐに語りかけていた。

昨年3月に渋谷・TSUTAYA O-nestで行われた「夜明けの支度」以来、さユり自身にとって2度目のワンマンライヴであり、バンドスタイルでは初のワンマンとなる渋谷WWW公演「ミカヅキの航海」。昨年のメジャーデビュー後『ミカヅキ』『それは小さな光のような』のシングル2作品をリリース、2次元と3次元/ヴァーチャルとリアルを越境する「2.5次元パラレルシンガーソングライター」としての独特の在り方が注目を集める彼女だが、ギターを激しくかき鳴らしながら突き上げるそのパワフルな歌は、一貫して生きることの困難さと、だからこそ「今」の実感を懸命に確かめようとする切実さに満ちていた。

これまでさユり単独、もしくはギター&キーボードを伴っての3人編成でライヴを行ってきた彼女は、今回ギター/キーボードに加えてドラム/ベースを擁した5人編成のバンドスタイルで登場。さユり以外のメンバーは全員黒ずくめ&黒のガスマスク姿で、後に紹介された呼称はそれぞれガスマスク2号(Key)、ガスマスク3号(G)、ガスマスク4号(B)、ガスマスク5号(Dr)。暗転したステージを覆う紗幕が映像を投影するスクリーンとなって、彼女の別人格=永遠の14歳「さゆり」と死神「サユリ」のイラストが映し出され、スポットライトに照らされた白ポンチョ姿のさユり本人の姿とともに、「3人のさユり」が目の前に立ち現れる――そんなコンセプチュアルな演出に会場の緊迫感が増したところで、最新シングル『それは小さな光のような』のカップリング曲“来世で会おう”のアグレッシヴな歌でライヴは幕を開けた。華奢な身体を振り絞るように絶唱する歌声は、激情や衝動といったエモーショナルな危うさよりもむしろ、自分のすべてを燃やし尽くして目の前の現実を切り開こうとする揺るぎない意志を感じさせるものだし、

ピアノのイントロから流れ込んだ“蜂と見世物(サーカス)”で「いじめの傍観」による悲劇を憂い、さらに“オーロラソース”のシャッフルビートに《見て見ぬ振りを続けてた罰だ》とシリアスなフレーズを託しながら、躍動感あふれるバンドサウンドをも牽引するほどのドライヴ感を生み出していく。彼女自身、「私は『忘れたい気持ち』と『忘れたくない気持ち』がどっちも強くて。中学2年生のセーラー服を来た“さゆり”ちゃんには、私の過去を背負ってもらって。もうひとりの“サユリ”には、自分の行くべき未来を担ってもらってます」と話していた通り、「後悔」が彼女の原動力としてその歌と演奏を突き動かしていることが伝わってくる。ライヴ中盤、テレキャスターに持ち替えたさユりの「次はいつもと違う感じで、『3人』で歌ってみようと思います」という言葉とともに“人間椅子”へ。紗幕に映し出された「さゆり」「サユリ」とコーラストラックとリンクしながら3声のヴォーカルを響かせる姿は、シンガーソングライターという言葉では到底カテゴライズ不能な、ミステリアスな表現世界を体現するものだった。

再びアコギに持ち替えてTVアニメ『僕だけがいない街』のエンディングテーマでもある“それは小さな光のような”のドラマチックな世界観をひときわ力強く凛として歌い上げた後、「この曲で初めて、いろんな意味で自分の殻を飛び越えて、外へ向かうっていうことをしました。私は強くないんですけど、強くなりたくて。この曲のおかげで、ちょっとは前に進めたかなって思います」とさユりは話していた。梶浦由記詞曲による楽曲に「シンガー」として形を与える、というトライアルによって新たな扉を開いた彼女自身の現在地を、その歌声は如実に物語っていた。

“スーサイドさかな”のスウィング感から“るーららるーらーるららるーらー”の赤黒く渦巻く切迫感へ、さらに“ちよこれいと”のパーカッシヴなアンサンブルの途中ではアコギを置いて会場のクラップを誘ったさユりは、「今日は『ミカヅキの航海』と題してライヴをやってきました。船出という意味の“航海”と、悔いるほうの“後悔”をかけた名前です」と静かに語り始める。「私の曲は後悔から生まれた曲ばかりです。だから、その後悔がなかったら、今日やった曲たちは生まれてないだろうし、もしかしたらあなたは私を知らない別の人生を送っていたかもしれない。ここで私の曲を聴いてくれてるあなたがいるおかげで、私は私の過去に意味を持たせることができました。本当にありがとうございます」……そんな言葉とともに響き渡った本編ラストの楽曲は“ミカヅキ”。《欠けた翼で飛ぶよ 醜い星の子ミカヅキ》という鮮烈なイマジネーションあふれる歌が、観る者すべての身体と心を震わせるように熱く広がっていった。

アンコールではデビュー前のライヴで着ていたポンチョに着替えて登場、「高校に入学したての時に作りました」という“酸欠少女”をガスマスク2号とふたりで披露。曲を終えてすぐさま退場した2号が、さユりのトランクとギターケースを持ってステージに戻ってくる。アコギを抱えて舞台に腰を下ろし、さユりが舞台上で再現してみせたのは、かつて彼女が行っていた路上ライヴのスタイルだった。

「路上ライヴはいつも、しんどいです。『止まってくれんかったらどうしよう』ってずっと思って、お腹が痛い毎日でした。でも、それをやってきたおかげで、ここまで来れたから。すごくよかったなって、心から思ってます」とさユりが語る。「悲しいことは、悲しいことじゃないって思います。いけないことじゃないです。喜びと同じくらい、価値があると思うんです。だから、生きていてください。生きていればたぶん、過去に意味を持たせることができるから。生きていてください」――ひと言ひと言噛み締めるように語りかけた彼女が最後に歌った“夜明けの詩”が、狂おしいほどの熱量と圧巻の訴求力をもって響いてきて、思わず胸が熱くなった。6月には東京・大阪にて「ミカヅキの航海」追加公演の開催も決定しているさユり。その歌はもっともっと多くの人に愛され必要とされていくはずだ。(高橋智樹)

●セットリスト
1.来世で会おう
2.蜂と見世物
3.オーロラソース
4.BANDAGE
5.光と闇
6.knot
7.人間椅子
8.ふうせん
9.それは小さな光のような
10.スーサイドさかな
11.るーららるーらーるららるーらー
12.ちよこれいと
13.ミカヅキ

(Encore)
14.酸欠少女
15.夜明けの詩
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