2016年6月22日(水)の発売までいよいよあと1ヶ月を切った、東京スカパラダイスオーケストラ feat. Ken Yokoyama名義のニューシングル『道なき道、反骨の。』。谷中敦作詞・川上つよし作曲、ゲストボーカルに横山健を迎えた表題曲“道なき道、反骨の。”を、今月16日に行われたKen Yokoyama×スカパラの2マンライブで初めて生で観ることができた(同公演のライブレポートはこちら http://ro69.jp/news/detail/143237)。魂の祝砲の如きスカパラのアンサンブルと横山健の裸の歌が一丸となって、ハイエナジーなスカパンクの多幸感を生み出してみせた“道なき道、反骨の。”は、クライマックス満載のこの日のアクトの中でもひときわ強烈な歓喜に満ちて響いていた。先日UPされたミュージックビデオで、その歌と音像がリリックとともに公開されている。
“道なき道、反骨の。” MV -Short Ver.-/東京スカパラダイスオーケストラ
《恨まずに終わりにしようか 嫌な夢》《俺たちの時代も未来は 見えなかった/夢一つあとは何一つ 望まない》という哀歌/挽歌的なフレーズを含みつつも、《悲しいこと振り切りたくて/走り続けているだけさ/いいことばかりじゃないが/お前を連れてゆきたい》と晴れやかなメロディとともに突き上げる横山の歌。そして、後半に登場する《道なき道 反骨の/神様の背中を見てた》のフレーズを熱唱する歌声から滲む、「闘い続ける者」にしか描き出せない圧巻の生命力。「志のある人間は人に優しくできる心の器の大きさと余裕が持てる筈だと思います。スカパラは、若い人たちを力一杯応援したい気持ちでいっぱいです。夢を見づらい時代、夢を見ることが困難でもせめて志は高く持って欲しいです」という谷中のコメントからも、この歌詞と横山の歌に託した想いが伝わってくる。
そして――そんなスカパラの真摯な男気に真っ向から応えた横山健。ご存知の通り、ライブでのカバーなどを除けば、オリジナル楽曲のボーカルで横山が日本語詞を歌うのは、ハイスタ時代も含め今回が初となる。自身の連載コラム『横山健の別に危なくないコラム』(http://www.pizzaofdeath.com/column/ken/)でも、あふれんばかりのスカパラ愛のみならず「とにかくあの人の世界観が好きなのだ。絶対にオレにはない視点、感性、風景の切り取り方...なんといっても谷中さんは『豪快で繊細』であり『繊細で豪快』な人だ(この二つは順番をひっくり返しただけだが、若干ニュアンスの違う二つの言葉)。それがこれでもかってほど文字に出てる」と谷中の歌詞世界へのリスペクトを綴っている通り、今回彼が初の日本語の歌詞を歌ったのは「谷中作詞のスカパラの楽曲だから」というのが大きな契機になっていることは間違いない。
何より、谷中の日本語詞を歌う彼の歌を、ライブで初めて聴いたときに僕が確かに感じたのは、“I Won't Turn Off My Radio”で《暗闇を突き破って/誰かの想いを 光を オレに届けてくれ/オレはラジオを切らないよ》(訳詞)と熱く、晴れやかにたぎらせていた不屈のパンク精神そのものだった。彼が今まで英語詞越しに(日本語のポップシーンへのカウンター魂もこめて)撃ち放ってきた「反骨」に、日本中の誰が聴いてもわかる言葉と形を与えてみせた谷中。そして、クリエイターとしてのみならず、自分と同じく「闘い続ける者」としてスカパラを信頼し、谷中のリリックに自らの足跡も情熱もすべて重ね合わせてみせた横山。新たな才能が次々に飛び出す2016年のシーンにおいて、別々の長い道程を走り続けてきた魂同士がスカもパンクも踏み越えて共鳴し合った“道なき道、反骨の。”は間違いなく、音楽の「今」と「これから」を語る上で欠かすことのできない名曲だ。ひとりでも多くの人の心に届いてほしいと思う。(高橋智樹)