サラ・ブライトマン、2年ぶり8回目の来日ツアー東京初日の日本武道館公演を速報レポート

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2013年に『ドリームチェイサー(夢追人)』をリリースしたサラ・ブライトマンが、昨日
7月11日、日本武道館で単独来日公演を行った。

RO69では、同公演のオリジナル・レポート記事をお届けします。
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【サラ・ブライトマン @ 日本武道館】

このサラ・ブライトマンという人には、それこそ無数の紹介フレーズが存在する。ここ日本でも驚異のロング・ヒットとなった“Time To Say Goodbye”、世界トータル・セールス3000万枚超え、アンドリュー・ロイド・ウェーバーとの忘れ難いコラボの数々、2度のオリンピックでの歌唱披露、そして日本の映画、ドラマ、スポーツ番組、CMと幅広く彼女の歌は使用され、日本に住んでいてサラの歌声を聴いたことがない人はほとんど居ないんじゃないか、というほどの日本における圧倒的人気と認知度。今回のツアーも東京の武道館2日間と大阪のフェスティバルホール2日間をソールドアウトし、追加公演が出るほどの盛況ぶりだ。

天井付近までぎっしり観客で埋まった開演直前の武道館のステージに、オーケストラが続々と集結してくる。そう、サラ・ブライトマンが見せるのは数十人からなるフル・オーケストラを従えてのパフォーマンスで、オーケストラが壮大なプロローグを奏でる中、満場の拍手で迎えられた彼女のこの日の1曲目はいきなりの日本語歌唱、NHKドラマ『坂の上の雲』の主題歌“Stand Alone”だ。続く最初のMCも「ミナサン、コンバンワ。マタトキオニコラレテウレシイデス」とこれまた流暢な日本語で挨拶。押しも押されぬ世界の歌姫であり、またとりわけ日本で高い人気を保ち続けている彼女ならではの、日本のファンとの親和性をアピールした出だしだった。

その後、この日のショウがサラのフェイヴァリット・ソングを3人の豪華ゲストと歌うという内容になることが説明される。“Stand Alone”はドラマ主題歌だけあってポップスの要素が強いナンバーだったのに対し、続く“Anytime,Anywhere”はサラの3オクターブとも言われる驚異のソプラノ・ヴォイスを遺憾なく生かしきったオペラ的歌唱ナンバーで、旋律をなぞっていくタッチはどこまでも繊細で羽のように軽やかなのに、その一方で声量&ビブラートは共に圧倒的ダイナミズムだという絶妙のバランスに度肝を抜かれる。

かと思えばカンサスの“Dust In The Wind(すべては風の中に)”のカバーは、カントリー・ギターの温もりとラテン・ギターの哀愁をバックに、カルメンみたいな表情と共に舞歌うキャッチーさで、改めてサラ・ブライトマンがクラシックとポップを融合させた「クラシカル・クロスオーバー」の女王と呼ばれている所以が理解できる展開だ。

“Carpe Diem”でこの日最初のゲスト、テナー歌手のマリオ・フラングーリスが登場し、デュエットを披露する。1部後半の“Canto Della Terra(大地の歌)”でのデュエットもそうだったけど、サラのソプラノとマリオのテナーは寄り添い引き立て合うと言うよりも、正面からのガチンコ対決みたいな妙な迫力と緊張感がある。もうひとりのゲストでピアニストのディ・ウーはラフマニノフのコンチェルトで超絶技巧を披露し、これまた観客を圧倒していた。ちなみにゲストのソロ・パートはサラのブレイク・タイムに充てられる格好だ。

プッチーニの『蝶々夫人』の“ある晴れた日に”をリミックスして取り入れた“It’s A Beautiful Day”はまさにサラならではの大胆なクラシックのポップ解釈が施され、思いっきりパーカッシヴなそのアレンジはニューウェイヴ期のゴスっぽいエレポップのようにも聴こえる。音楽の専門教育を寄宿舎で叩き込まれた後、ポップス、ミュージカル、クラシックと自在に渡り歩いてきた彼女だが、土台にソプラノ歌手としての揺るぎない実力があるからこそ自由なのだと感じる瞬間だ。

プロコル・ハルムの“A Winter Shade Of Pale(青い影)”やサイモン&ガーファンクルの“Scaborough Fair”のカバーも見事に歌いこなすが、それにしてもカンサスやプロコル・ハルムといったプログレッシヴ・ロック系アーティストのナンバーとサラの声との相性の良さが面白い。

ちなみにこの日の観客の年齢層はかなり高く、熟年のご夫婦のようなカップルを多数見かけた。クラシック・ファンからポップスとして聴いているファン、それにお茶の間でサラを知ったであろうファンと、入り口は恐らく人それぞれだろう。そして、その様々な「聴かれ方」の全てに対応すると言うか、様々なニーズの全てを満たしつくしていくサラの声はやはり破格で、理屈をすっ飛ばして身体が先に震えるような感動がしばしば訪れる。プッチーニの『トゥーランドット』のナンバーにして、パバロッティの十八番としても有名な“Nessun Dorma(誰も寝てはならぬ)”なんてまさにそういう本能に訴えかけるヴォーカリゼーションで、呆然としているうちに1部が終わる。

そう、この日は20分の休憩を挟む2部構成で、ゲストのソロ・タイムと合わせてサラの衣装替えのタイミングであり、休息時間になっていた。たしかにあれだけ喉を酷使した超絶歌唱をノンストップでやり続けるのは無理があるだろうし、インターバル明けの彼女は徐々に疲れを重ねるどころか、さらにパワー充填してパーフェクトな状態で再起動するかのような、底知れぬパワーを見せつけてくる。

2部はさらにポピュラーなナンバーが立て続けに披露される。ベートーベンの交響曲第7番第2章のメロディをフィーチャーした"Figlio perduto"、トニー・ベネットを筆頭にありとあらゆる歌手によって歌われてきた“Stranger In Paradise”、そしてサラが「70年代のディスコ・ソング」と紹介してマリオとデュエットした“There For Me”と、多種多様な「ポップ」の在り方をガンガン示し続けていく。最後のゲストは若きカウンターテナーのナルシス。マリオとのデュエットとはまた全く異なり、カウンターテナーならではの高音かつ繊細なナルシスの歌声を、サラのソプラノが母のように包み込む印象だった。

そしてクライマックスはここで来ました“The Phantom Of The Opera”! サラはもちろん、『オペラ座の怪人』のラウル役で鳴らしたマリオにとっても十八番中な十八番なわけで、この曲でのふたりのデュエットはミュージカルというショウ・ビジネスのトップ・オブ・ザ・トップ、究極のかたちを見せつけられた体験だった。曲のアウトロ、これでもかと繰り返されるサラの天井破りの雄叫びのようなソプラノは、ほとんどアスリートが世界記録に挑むようなパフォーマンスで、歌が終わった瞬間に爆裂した拍手はいつまでも鳴り止まず、サラの挨拶が聞こえないほどだった。

本編ラストはもちろんこの曲“Time To Say Goodbye”。しかし個人的には直前の“The Phantom Of The Opera”の衝撃が尾を引きまくっていて、この曲はほとんどチル・タイムとして過ごしてしまった。

アンコール1曲目は、この日のオーケストラの指揮を務めたポール・ベイトマンがピアノを弾き、サラが代わりに指揮を取るという趣向をこらした“Warsaw Concerto”、そしてオール・ラストはゲスト3人と共に歌う大団円の“Running(ジュピター・惑星)”だ。

約2時間弱のこの日のパフォーマンスは、誰もが知るナンバーの数々を、他の誰にもなしえない声で歌い、昇華していくというものだった。定番を崩すのではなく、定番の質を極限まで高めていくサラ・ブライトマンの声とパフォーマンスは、これもまたポップ・ミュージックのひとつの究極形と呼べるものだったのだ。(粉川しの)

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なお、サラ・ブライトマンはこの後、東京、金沢、大阪、名古屋で単独公演を行う。

公演の詳細は以下の通り。

●ライブ情報
「サラ・ブライトマン ジャパン・ツアー 2016」
【東京】
2016年7月12日(火) 日本武道館
2016年7月14日(木) 東京国際フォーラム ホールA
2016年7月15日(金) 東京国際フォーラム ホールA
お問い合わせ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999 http://udo.jp/

【金沢】
2016年7月17日(日) 本多の森ホール
お問い合わせ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999 http://udo.jp/

【大阪】
2016年7月19日(火)・7月20日(水) フェスティバルホール
2016年7月21日(木) オリックス劇場
お問い合わせ:大阪ウドー音楽事務所 06-6341-4506 http://udo.jp/Osaka

【名古屋】
2016年7月22日(金) センチュリーホール
お問い合わせ:
ウドー音楽事務所 03-3402-5999 http://udo.jp/
CBC事業部 052-241-8118

■チケット料金
S:¥15,000 A:¥14,000 B:¥13,000(税込)

更なる詳細は以下のサイトで御確認ください。
http://udo.jp/
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