西野カナが「初のウエディングソング」をリリースするということは自分にとってもタイムリーなことだった。と言うのもちょうど来月、幼馴染が結婚式を挙げることになり、それに参加する予定があるのだ。その幼馴染とは匂いつき消しゴムを取り合ったり、お泊り会で夜を明かしたり、制服で自転車を2人乗りして警察官に怒られたりした学生時代(もっと華やかな思い出はないのだろうか)を経て、大人になった今でもよく集まってはお酒を酌み交わす仲だ。
2016年10月26日(水)にリリースされる『Dear Bride』の表題曲は、友人の結婚式でのワンシーンを切り取った楽曲だが、そんなふうに長く付き合いのある友人へ向けて書かれた、もしかしたらラブレターよりもこっ恥ずかしい贈り物なのかもしれない。それは曲中の《誰が最初に結婚するんだろうって/笑いあったあの頃》だったり《真っ白に輝くドレス姿に/目を合わせるのも少し照れくさいけど》という歌詞からも窺がえる。
西野カナは恋愛の楽曲が多くを占めるイメージがあるが、“Best Friend” や“君って”、“私たち”といった女同士の友情の歌も多い。今回の楽曲はというとそんな西野カナの二大要素である「恋愛」と「友情」が合わさった強力ナンバーとなっている。最近のシンプルな楽曲アレンジの流れを組んでいながらも、「結婚」という晴れやかな舞台にマッチするキラキラとしたサウンドに、花嫁となる友人への温かい目線と愛にあふれた祝福の言葉が並ぶ。《大きな夢を今/この場所で叶える君を/心から誇りに思うよ》《本当におめでとう 幸せになってね》――その言葉には一点の曇りもペシミズムの欠片もなく、ただただ友人に対するピュアな感情だけが込められている。
応援歌やラブソングは共感できるものが多い。それもそのはず「逆境」と「恋愛」は全ての人間が大体にしてぶつかる事柄だからだ。そういった誰もが共感しうるテーマや言葉はそれゆえ大量生産型に感じ、全く響かないものは響かないし、思わず嘘くさいと思ってしまうものもある。「頑張れ」とか「好き」ということを伝えるだけでも何通りもの言い方があるが、楽曲という作品にするときにその言い方や伝え方はその人の人生によってアレンジされたり、その人自身が持つフィルターに通ってそれぞれ変わっていくものだと思う。
西野カナの歌詞は従来、誰もが共感しやすい最大公約数的な言葉選びが特徴だったが、今年7月にリリースされたアルバム『Just LOVE』では、より具体的でどこか生活の匂いがする言葉が多く使われていた。しかし、今回の曲はそのどちらでもない。曲中の「私」が花嫁になる「君」に対して照れを感じながらも、素直に思ったこと、言いたいことがそのまま曲になっている気がするのだ。それは西野カナとほぼ同世代の私が来月初めて友人の結婚式に行くように、そんな年頃の彼女だからこそ、シンプルな言葉なのに嘘のない「君」へ贈る初のウエディングソングが出来たのだろう。(渡辺満理奈)