【レビュー】BABYMETAL『LIVE AT WEMBLEY』がついに映像化ーー歴史的名演を今こそ観るべき理由

【レビュー】BABYMETAL『LIVE AT WEMBLEY』がついに映像化ーー歴史的名演を今こそ観るべき理由

アイドルシーンの突然変異体的なプロジェクトとしてBABYMETALが2010年に結成されてから、「まったく新しいメタルポップの開拓者」としてロンドンの名門会場=SSEアリーナ・ウェンブリー(ウェンブリーアリーナ)の大舞台に立つまで、わずか6年。BABYMETALの駆け抜けてきた時間の加速度を思うと、それだけで胸が熱くなる。

「日本人初」という称号は、本来は今年3月に行われるはずだったX JAPANの公演延期によって「結果的に」もたらされたものだし、おそらくBABYMETAL自身も想定外だったはずなので一旦横に置いておくとしても、それこそU2、ビヨンセ、マドンナ、ミューズなど世界のビッグアーティストが歴史的熱演を繰り広げてきた伝統あるウェンブリーアリーナに、極東の島国から来た10代の少女たちが新たに足跡を刻むという事実を、1万2千人に及ぶ現地のファンが全力で歓迎していた――ということを、このライブBlu-ray&DVD作品『LIVE AT WEMBLEY』は歴然と物語っている。

このウェンブリーアリーナ公演前日に世界同時リリースされたばかりの2ndアルバム『METAL RESISTANCE』から“ヤバッ!”“KARATE”など計7曲を盛り込み、アンコールの“Road of Resistance”も含めBABYMETALワンマンでは最多の17曲を披露したセットリストから、そして何より、気迫に満ちたSU-METAL/YUIMETAL/MOAMETALの表情とキレキレのパフォーマンスから、この日の舞台に懸ける3人の覚悟はダイレクトに伝わってくる。

が、この『LIVE AT WEMBLEY』で何より胸揺さぶられたのは、コワモテの現地メタルファンもコスプレ姿の英国女子も、歓喜を露わにしながら拳を突き上げ、フォックスサインを掲げ、会場一面のシンガロングを巻き起こしながら、思い思いに多幸感を剥き出しにしている姿だ。
つまり今作は、単なる「ロンドン名門会場にライブをしに行ったBABYMETALの成功の記録」ではなく、「BABYMETALを待ち受ける英国ロックファンの熱狂が描き出した、必然としての祝祭空間のドキュメント」でもある、ということだ。
特に、最後の“Road of Resistance”で、SU-METALの「Come on, Wembley!」のスクリームに応えて、アリーナ狭しと高らかに響き渡る♪Resistance〜の大合唱には、何度観ても抑え難い感激が湧き上がってくる。

ガールズダンスユニットとしてヘヴィメタルの熾烈な世界へ飛び込むこと。全身震撼レベルの神バンドの超絶轟音アンサンブルと真っ向から渡り合うだけの鮮烈なテンションを体現すること。海を渡り、国境を越え、言語の壁を越えて、メタル×ポップの衝撃を打ち立ててみせること――。
BABYMETALの音楽はそのまま、アウェイの場所をひとつひとつホームグラウンドに塗り替えながら、なおも未知の地平をひた走るSU-METAL/YUIMETAL/MOAMETALの挑戦と闘いの凱歌であり、その歌とパフォーマンスに衝動を震わされる世界中のリスナー/オーディエンスにとって最高のファンファーレでもある。そんなBABYMETALの在り方を、今作は改めて明確に浮かび上がらせてくる。

12月にはレッチリUKツアーのゲストアクトとして、O2アリーナ/マンチェスターアリーナといった英国最大級のアリーナ会場でライブを行うことが決定しているBABYMETAL。彼女たちのメタルレジスタンスの炎は、ますます熱く激しく燃え続ける。(高橋智樹)
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