【コラム】DOTAMAのベスト盤は集大成にして通過点――期待が高まって仕方ない

【コラム】DOTAMAのベスト盤は集大成にして通過点――期待が高まって仕方ない - 『DOTAMA BEST』 発売中『DOTAMA BEST』 発売中

2016年、栃木・佐野出身のヒップホップMC・DOTAMAは、『フリースタイルダンジョン』の鬼気迫るMCバトルで広くインパクトを残す一方、自身初のバンドプロジェクトとして、長島涼平(B)、松本誠治(Dr)、Rie(Key)らと共にFINAL FRASHをスタートさせた。はたまたKuma The Sureshotとの共作ミニアルバム『DIRECTORY』を発表するなど、これまで磨き上げてきた個性とスキルを多方面に向けて解き放つ活躍ぶりであった。その1年を締めくくるように、2016年12月21日、『DOTAMA BEST』がリリースされた。

初めてのベスト盤となる本作には、これまでソロ名義で発表してきた楽曲や、コラボ作品、そして新曲3曲を含む、バラエティに富んだトラックが計19曲詰め込まれている。つい先ごろMVも公開された“WINNERS〜Monsters War〜feat.掌幻,Dragon One”は、『フリースタイルダンジョン特別編』で、DOTAMA、掌幻、Dragon Oneの3者がチーム優勝を果たした記念に制作された楽曲だ。

“WINNERS〜Monsters War〜feat.掌幻,Dragon One”ミュージックビデオ

上京前から足しげく都内へと通いつめ、働きながら数々のMCバトルでタイトルを獲得してきたDOTAMAにとって、眼鏡の奥でギラリと眼光を覗かせながらブチ切れたテンションへと持ち込むバトルでの姿は、もちろん大切な一面だろう。ただ、こと音源作品に関しては、さまざまな表情と感情の形を残してきたのも事実だ。今回のベスト盤では、ぜひそのことを確認してみて欲しい。

2015年のアルバム『ニューアルバム』にも収められていた“イオンモール feat.カクマクシャカ”では、物悲しいギターリフレインが伝うトラックの中、巨大ショッピングモールの迷路に捕われた自身を語ることで、現代の郊外生活者のマインドを代弁している。USKとのコラボでリリースされた“好きな歌が街にあふれて”は、アップテンポなのに哀愁漂うエレポップナンバーで、情報があふれ返りリスナーの心に音楽が入り込む隙のない時代の切迫した危機感を伝えている。また、深く情緒的なエレクトロニカに乗せて放たれる壮大なストーリーテリング“神さまになった少年”は圧巻だ。

新曲“本音feat.般若”はどうなることやらとハラハラしていたが、現代的なマイアミベースの上で両者の悪ノリぶっちゃけラップが相乗効果を生む、楽しい1曲になった。そして、表現者としての更なる意欲を燃やす、DJ WATARAIプロデュースの華やかなファンクチューン“ベストソング”。初めて“音楽ワルキューレ2”に触れたときには何か励まされるような感覚を抱いたが、音楽シーンを深く洞察して進む知性派MCは、これからも面白いものを見せてくれそうだ。DOTAMAは2017年1月21日(土)に渋谷WWWでのワンマンを予定し、2月にはFINAL FRASHの東名阪ツアーを控えている。(小池宏和)
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