【コラム:Suchmos】6人の快進撃を本当に理解するための6つのキモ

【コラム:Suchmos】6人の快進撃を本当に理解するための6つのキモ

セカンドアルバム『THE KIDS』のリリースにより、カルチャー全域に影響を及ぼすような存在感を示しているSuchmos。YONCE(Vo)、HSU(Ba)、OK(Dr)、TAIKING(Gt)、KCEE(Dj)、TAIHEI(Key)の6人で構成されているこのバンドは、どのようにして現在にたどり着き、シーンにどのような影響を及ぼしてきたのか。今回のテキストでは、そのことをあらためて振り返ってみたい。


① アルバム『THE KIDS』は累計10万枚目前
(“A.G.I.T.”ミュージックビデオ)

2017年1月25日にリリースされたSuchmosの2作目となるアルバム『THE KIDS』が、初週売上約75,000枚のセールスで第2位を記録した(首位はAKB48『サムネイル』)。2月に入ってからも連日のようにデイリーチャートのトップに位置しており、着実に売り上げ枚数を伸ばし続けている(現在96,051枚/2017年2月13日時点)。2015年のデビューアルバム『THE BAY』(現在のアーティストロゴはこの作品から使用されている)が週間チャートで最高26位、2016年に発表されたEP群『LOVE&VICE』や『MINT CONDITION』がいずれもトップ20圏内と好成績をマークしてきたが、新作はセールス面においても飛躍の一枚と言えるだろう。

② では、Suchmosってどんなバンド?2013年1月に結成されたSuchmosは、地元・神奈川を拠点に活動してきた。バンド名の由来は、名ジャズトランペッター、ルイ・アームストロングの愛称サッチモであり、2015年に初の全国流通音源となるEP『Essence』でデビュー。なお、同作リリース前の2014年7月には、「FUJI ROCK FESTIVAL '14」の若手登竜門と呼ぶべき「ROOKIE A GO-GO」に出演し、注目を集めている。彼らにとってはこれが初のフェス出演だったが、2年後の同フェスでは2番目に大きなステージ=「WHITE STAGE」へとステップアップを果たした。また、「Apple Music Best of 2015」ベストニューアーティストにも輝いている。

③ なぜ、僕たちはSuchmosの音楽に夢中になるのか?クラブ/ダンスカルチャーと親和性の高いアシッドジャズは、Suchmosのスタイリッシュかつグルーヴィーな音像の重要なルーツだろう。HSUとTAIHEIは、ヒップホップバンドのSANABAGUN.メンバーとしても活躍しており、YONCEはSuchmos結成前にロックバンドのボーカリストを務めてきた経緯がある。多様な表現スタイルを乗せて運ぶ「器」として、Suchmosのスキルフルな演奏が機能しているのだ。また、“STAY TUNE”や“TOBACCO”のように、若い目線で時代を抉る歌詞は、バンドのクールなサウンドと結びつくことでメッセージの鋭さを倍増させている。触れれば分かる音の「粋」と若い思想。これが両輪となって、Suchmosの快進撃を支えてきたと思える。


④ CMへの抜擢、そしてエアプレイによって掴んだ大きな支持
(“STAY TUNE”ミュージックビデオ)

インターネット上に公開されてきたミュージックビデオの効力はもとより、ラジオプレイにおいても強力なサポートを受けてきたことが、Suchmosの特徴として挙げられる。J-WAVEのオフィス内を闊歩するミュージックビデオが印象的な“STAY TUNE”(「チャンネルはそのままで」の意をもつタイトルがいかにもラジオにぴったりだ)はJ-WAVE HOT 100の1位を記録したほか、大阪・FM802の番組『MUSIC FREAKS』には現在YONCEが藤原さくらと交代で出演しているなど、各地放送局にもレギュラー番組を持つ活躍を見せてきた。また“STAY TUNE”は2016年秋からホンダ『ヴェゼル』のCM曲にも起用され、都会的で洗練されたサウンドが見事に嵌って幅広い層に印象をもたらすことになる。多様なメディアの良いところを乗りこなしてきた点が、Suchmosの面白さだ。学べることは多い。

⑤ Suchmosはファッションリーダーであり、オピニオンリーダーである
(Live in Levi’s® Project ver.2 | Suchmos)

(TOKYO CULTURE STORY|今夜はブギー・バック(smooth rap) in 40 YEARS OF TOKYO FASHION & MUSIC|presented by BEAMS)

“MINT”のリーバイスとのコラボや、BEAMSが創業40周年を記念して公開したドラマティックなビデオへのYONCEの出演、はたまた「装苑男子」に選ばれるなど、Suchmosはファッションシーンから注目を浴びることも多い。これは決して音楽と無縁な話題ではなく、むしろSuchmos作品の時代を射抜く強烈なアティテュードが、ファッションと結びついているのだ。パンクも、ヒップホップも、音楽であり思想でありカウンターカルチャーだった。現代の新しいカルチャーを象徴するものとして、Suchmosが注目されているのである。こうして音楽を起点に新たな現象を巻き起こすことができるアーティストは、そう多くはない。

⑥ そしてSuchmosはどこへ向かうのか? 新ツアーの対バンにも注目!今後のSuchmosの活動としては、まず3月スタートの「TOUR THE KIDS」がある。ワンマン公演も楽しみな一方で、対バン公演のゲストはGRAPEVINE、Yogee New Waves、D.A.N.、そしてOKAMOTO’S。以前に共演経験のあるグループも含まれてはいるが、若手もベテランもジャンルも無用、しかしディープな音楽愛と尖ったアティテュードを持つアーティストたちという点では一致している。歯ぎしりしつつ、つば迫り合いを繰り広げるような対バンの光景が目に浮かぶようだ(意外とピースフルな雰囲気かもしれないけど)。こういう、世代やスタイルを超えた真剣勝負に挑みたい、というSuchmosの姿勢が窺える。即完を受け新木場スタジオコースト2daysも発表された各地公演、じっくりと見届けてほしい。(小池宏和)
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