シンセサイザーやエレクトリック・ピアノなどの電子音楽楽器で世界的に有名なローランドの創業者、梯郁太郎が4月1日に他界していたことが明らかになっている。生前会長職に就いていた楽器映像機器メーカーのATV株式会社の発表によると、1日朝6時34分に心不全のため息を引き取ったという。享年87だった。
梯は時計修理業から身を起こし、ラジオや電気機器などの修理や販売を経て、1960年にエース電子工業を設立し、エーストーンのブランド名で知られる電子オルガンやリズムマシーンを世に送り出していくことになった。
その後経営方針の対立から梯は新たにローランドを1972年に設立し、リズムマシーン、電子ピアノ、ギター・エフェクターのほか、シンセサイザーの開発にも乗り出すことにもなった。
電子楽器ではヤマハなどと並んで世界的なメーカーとなったが、特にリズムマシーンのTR-808は80年代以降のポップ・ミュージックやブラック・ミュージックのサウンドに画期的な影響をもたらしたことで有名で、80年代後半以降のヒップホップ・サウンドそのものを形作った機材として象徴的な名機とされている。イエロー・マジック・オーケストラの"1000 KNIVES/千のナイフ"、マーヴィン・ゲイの"Sexual Healing"、アフリカ・バンバータの"Planet Rock"でのサウンドが特に有名で、ヒップホップではビースティ・ボーイズ、LL・クール・J、パブリック・エネミーらによって多用されることになった。その後もロックやヒップホップ、R&Bと数多くのアーティストがTR-808を使っていて、カニエ・ウェストなどは自身の傷心を歌い上げた2008年のアルバム『808s & ハートブレイク』ではタイトルにまでその名称を入れたほどだった。
また、梯は海外のシンセサイザー・メーカーのオーバーハイムやシーケンサー・サーキット、それと国内のヤマハなどのメーカーとともに電子楽器間のインターフェイスを可能にするMIDI規格を開発したことでも知られていて、2013年にグラミー賞の技術部門にあたるテクニカル・グラミー賞をシーケンサー・サーキット創業者のデイヴ・スミスとともに受賞していた。