天狗や狸が暮らす京都の街で、人間に化けながらさまざまな出来事に首を突っ込んでいく、狸の矢三郎。気ままに生きているようで、家族思いでナイーブな部分も併せ持った多面的なキャラクターを、櫻井はナチュラルかつ魅力たっぷりに演じている。
矢三郎の個性のひとつである、ユニークなキャラクターたちとの温かく適度な距離感をどう表現していったのか、櫻井は次のように語る。
「父親、母親、兄貴、弟、師匠とかに対して、いわゆるパブリック・イメージとしてみんなが持ってるような接し方をするようにしてます。(中略)矢三郎って、いろんなことをやりますけど、嫌われないんですよ。信頼とか愛情とか友情とかリスペクトがあって、すごく気を遣って他人の表情を見たり、めちゃくちゃ敏感なんです。自分の身をやつすこともいとわないタイプ」
「(矢三郎と)似てるかもしれないですね。僕自身、人と関わるときに上手くやれてるかどうかはわからないけど、『ここはベーシックにいこうよ』みたいなところが常にあって。仕事を通じてできた自分と、本来の自分があるんです。なんだろうな、いいように見せようとは思っていないというか。できるだけ丸く、楽しくやろうよ、みたいな」
「やっぱり自分と近いんだろうなっていうことは、今ははっきり言えますね。(中略)やっぱり、1キロ離れているキャラクターのところに1キロ頑張って行くのと、目の前にいる人に近づくのは取り組みとして全然違うし、かつ自分の中の要素も上手く使えるというか。すごくニアな存在なのかなっていう気がします」
『有頂天家族』を通じて気づいたキャラクターとの共通点や、収録中のエピソード、共演者との関わりなど、櫻井自身の人物像やコミュニケーションのあり方を象徴する言葉が詰まった、貴重なインタビューだ。