【地上波放送で、もう一度『君の名は。』を観る前に】瀧と三葉の恋が時空を超えた5つの秘密

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新海誠監督の最新監督作『君の名は。』は1900万人を超える驚異的な動員を記録した作品なので、一度は劇場でこの映画を観た上で、改めて観るという人も多いと思うのだが、ここではこれから2回目以降の『君の名は。』鑑賞を体験する人のために、瀧と三葉というふたりの主人公を繋いだ5つの神秘について解説したいと思う。物語の構造の特殊性ゆえに、公開タイミングでは、ネタバレを避けるため詳しい分析を書くことはできなかったのだが、ここでは踏み込んだ解説を書きたいと思う。なので、これから初めて『君の名は。』を観るという人は、ここから先はまだ読まないことをおすすめします。

1 入れ替わりの夢と落書き


さっきまで、まるで現実のようにはっきりとした、ときには涙を流すくらい生々しく感情を揺さぶる夢を見ていたのに、それがどんな夢だったのか思い出せない。そして時間が、どんどん記憶の深いところにその夢を流していってしまう。そんな経験を、もしかしたら憶えていないだけで、多くの人がしているのではないかと思う。東京で暮らす男子高校生の瀧(神木隆之介)と、岐阜県の糸守町という山深い田舎町に住む女子高校生の三葉(上白石萌音)は突然、そんな夢の中で入れ替わりながら、お互いの体の中を行き来するようになる。
「お前は 誰だ?」
最初は瀧が三葉のノートに残したこのメッセージ。やがて携帯電話や、手や顔への落書きによって、その入れ替わりをふたりは現実だと認識し始める。
(※ここから特にネタバレなのでご注意)
そして、この映画のハイライトとも言えるシーンで、その体に文字を書くということはとても重要な意味を持つことになる。
瀧「目が覚めてもお互い忘れないように名前書いておこうぜ」
そう言って、瀧が三葉の手に最後に書いたのは実は自分の名前ではなくて、それよりも大切なメッセージだった。

2 組紐


三葉は妹の四葉(谷花音)と共に家業の宮水神社の巫女を務めている。その神社の儀式に使われる紐は、組紐という古くから伝わる伝統工芸によって、細い糸を組みわせて造られる。それは神さまの技、時間そのものを意味する。よりあつまって形を作り、捻れて絡まって、時には戻って、途切れ、また繋がる。この物語で描かれた時間の表現を、象徴するものがこの組紐なのである。
(※ここから特にネタバレなのでご注意)
瀧の時間軸で言うなら夢での入れ替わりが始まる3年前、東京まで会いにきた三葉に出会っても、瀧の方は誰だかわからなかったわけだが、そんな瀧に三葉は自分の後ろ髪を結っていた組紐を渡し、それを瀧は受け取る。そして瀧はそれ以来、その組紐をお守り代わりによく手首に巻いていた。

3 口噛み酒


同じく宮水神社の豊穣祭の儀式に登場するのが口噛み酒。巫女が米を口に含んで噛み、そして升の中に出し、その唾液と混ざった米を放置しておくことで発酵してアルコールになるという日本最古の酒だ。水、米、酒、なにかを体に入れるとそれは魂に結びつく。口噛み酒は、神さまと人間を繋ぐものとしてこの映画の中に登場するのだ。だから山の上のご神体の巨木の下の社に捧げられた口噛み酒は、巫女である三葉の「半分」なのだと、祖母の一葉(市原悦子)は言う。
(※ここから特にネタバレなのでご注意)
夢で三葉と入れ替わることがなくなった瀧が、その三葉の「半分」である口噛み酒を飲み、仰向けに倒れて石に頭を打ちつけられて、天井に描かれた彗星が自分に向かって落ちてきてぶつかると感じた瞬間、三葉の記憶のすべてが瀧の中に流れ込んできて、最後の入れ替わりは起こった。

4 カタワレ時


「誰そ彼と われをな問ひそ 九月の 露に濡れつつ  君待つわれそ」
新海誠監督の前作『言の葉の庭』のヒロインである古典教師のユキちゃん先生(花澤香菜)が上記の短歌を授業で解説するシーンも話題になったけれど、この短歌に登場する黄昏時の語源である「誰そ彼(たそかれ)」とは、夕方、昼でも夜でもない、人の輪郭がぼやけて、彼が誰かわからなくなる、人ならざるものに出会う時間のこと。三葉が暮らす地方の方言では、それを「カタワレ時」と言うらしい。
(※ここから特にネタバレなのでご注意)
ご神体の盆地を取り囲む岩場で、瀧と三葉がお互いのことを探す、この映画の最重要シーンのひとつ。実際は、体が入れ替わっていながらも違う時間軸にいるのでふたりは出会えるはずはない。しかし、そこで奇跡を起こすのが、この世ならざるものに出会う時間、カタワレ時だった。
瀧「ホント、大変だったよ! お前すげえ遠くにいるから」
このセリフ、本当に何度でも泣ける。

5 RADWIMPSの4つの歌


映画全体の劇伴を担当し、この『君の名は。』という物語に音楽の力によって魂を吹き込んだとも言えるRADWIMPS。そして4つの歌ものの楽曲が、それぞれ極めて重要なシーンで流れ、そのどれもが『君の名は。』の物語のテーマ全体を伝えるような楽曲になっている。

《5次元にからかわれて それでも君をみるよ/また「はじめまして」の合図を 決めよう/君の名を 今追いかけるよ》(“夢灯籠”)
《君の前前前世から僕は 君を探しはじめたよ/そのぶきっちょな笑い方をめがけて やってきたんだよ》(“前前前世”)
《運命だとか未来とかって 言葉がどれだけ手を/伸ばそうと届かない 場所で僕らは恋をする》(“スパークル”)
《嬉しくて泣くのは 悲しくて笑うのは/君の心が 君を追い越したんだよ》(“なんでもないや”)

(※ここから特にネタバレなのでご注意)
ここまでで解説してきた「入れ替わりの夢と落書き」「組紐」「口噛み酒」「カタワレ時」という4つの神秘があっても、最終的に瀧と三葉が、星が落ちてきても生き抜いて、そして新しい形で再会するためには、もうひとつ大きな力が必要だった。それがRADWIMPSという、恋の歌を、最早ラブソングという言葉では括れない、時空を超える巨大な力の歌にしてしまう特別なバンドの力だったのだと思う。

そんな5つの神秘の存在も意識しながら、2回目以降の『君の名は。』鑑賞を楽しんではどうだろう。(古河晋)

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