My Hair is Bad・椎木知仁は『運命 / 幻』でソングライターとして未知の扉を開いた

My Hair is Bad・椎木知仁は『運命 / 幻』でソングライターとして未知の扉を開いた
My Hair is Badの椎木知仁は「歌」や「音楽」の前では、どうしようもなく正直でなければいけないということを、どうしようもなくわかっている人だ。
だから彼の作る歌は、真剣なのに、どうしてもわがままになる。
そして椎木自身がもともとどれぐらいわがままな人なのかはわからないけれど、その「歌」や「音楽」と一体となりながら生きる彼は、その生き方もどんどんわがままになっているように見える。
いい意味でなのか、悪い意味でなのかはわからない。
せめてSNS上での情報ではなく、ライブでの彼の姿を観て、みんなが正直な気持ちで決めてくれれば彼も本望なのではないか?

とにかく椎木知仁という人にとってソングライティングというのは、わがままであることから逃れられない行為なのだと思う。

そこで今日、リリースになったニューシングル『運命 / 幻』である。
もう聴いた人はわかっていると思うけれど、ひとつの別れを男と女のふたつの視点から描いている、言わば組曲である。
どちらの曲もやはり椎木らしく、真剣であるがゆえに、相手側の真剣さに届かないという意味で、どうしようもなくわがままである。
かつて、ふたりの間の愛が熱を持っていたことの証である「指輪」。
その指輪に宿っていた熱は、お互いの真剣さが届かなくなったことで、あっけないスピードで冷えきっていく。
その冷え切っていくものを「運命」と呼んで、何かの始まりへと換えて行こうとする男。
その冷え切っていくものを「幻」と呼んで、そこに流れる時間を永遠に止めてしまう女。
最初は、どちらかに感情移入して聴く人もいると思う。
もちろん、これはとある男女の歌なので、自分とは性別の違う側の視点に共感する人もきっといるだろう。
でも、聴けば聴くほどに気付いていくはずだ。
どちらのわがままも正直すぎる椎木知仁の「歌」が抉り出した真実だということに。
それぞれの曲をソングライティングした椎木知仁は、やっぱりそれぞれにわがままである。
でも、ひとりの人間としてこの2曲をソングライティングしてひとつの作品としてパッケージした椎木はどうだろう?
そこにあるのは「運命」と「幻」の間に空いた亀裂に消えていった愛に、ソングライティングというもので、歌を歌うということで、My Hair is Badというバンドで音楽にするということで、何とか形を持たせたようとする男の、命がけで無謀な情熱だ。
My Hair is Bad・椎木知仁がソングライターとして、そんな未知の扉を開いたことがいいことなのか、悪いことなのかはわからない。
最終的にはやはり、ライブでの彼の姿を観て、みんなが正直な気持ちで決めればいいのだろう。(古河晋)
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