【完全解読】リアム・ギャラガー『アズ・ユー・ワー』は、これを読みながら聴け

【完全解読】リアム・ギャラガー『アズ・ユー・ワー』は、これを読みながら聴け

7. You Better Run

たとえば“Bold”がソングライター=リアム・ギャラガーのメロディ&リリシズムの最良例だったとしたら、同じくリアムが一人で書いた“You Better Run”は彼のロックンロールの理想を再定義するグルーヴ・チューンだ。「天使よ、かくまってくれ(gimme shelter)」、「完全にめちゃくちゃ(helter skelter)だ」と、ストーンズザ・ビートルズをさりげなく(…でもないか)レペゼンした歌詞にも注目。

8. I Get By

こちらもリアムの単独作曲ナンバーで、ヘヴィー・グルーヴのブルーズ・ロックンロール。リアムは長きにわたって「ビッグなロックンロールはバンドでなければ鳴らせない」と思っていたはずで、そんな彼がソロとしてこういう曲を一人で書き、歌えたことも意味は本当に大きいと言える。

9. Chinatown

“Paper Crown”に続きアンドリュー・ワイアットとマイケル・タイの共作曲。ひたすらビューティフル!な名曲。アコギのアルペジオのフォーキーで素朴な質感を残しつつも、後半に行くにしたがって重層的なリヴァーヴをがんがん効かせてリアムのファルセットを宙高く飛ばしていくという、シンプルのようで実はかなり大胆なプロダクションも最高。


10. Come Back To Me

リアム、カースティン、ワイアットの共作曲。“For What It’s Worth”が『モーニング・グローリー』的なオアシスを感じさせるナンバーだったとしたら、この“Come Back To Me”は『ディフィニトリー・メイビー』的オアシスを内在させたナンバー。無敵のギター・アルバム、ロックンロール・アルバムである『アズ・ユー・ワー』だが、ギター・ソロが大々的にインサートされる曲は殆どなく、これは数少ない一曲だ。

11. Universal Gleam

リアムは本作でアコースティック・ギターを数曲で披露していて、“Universal Gleam”もそのうちの一曲。8月の来日公演でも本編のクライマックスを担ったエピック・チューンで、「ユニバーサルな微光(Gleam)」というタイトルからはステンドグラスから外光が差し込む薄暗い聖堂を想起させるが、まさにそんな聖堂に響くゴスペルのようなナンバー。こちらもリアムのソロ・クレジット曲。

12. I've All I Need

最後もリアムのソロ・クレジット曲。「ひとりじゃビックな曲は書けない」とリアムは言っていたけれど、“Universal Gleam”や“I've All I Need”のようなナンバーを聴くと「なんだよ、全然書けるじゃないか!」と言いたくなってしまう。本編ラストに相応しいシンフォニックなナンバーで、ギター、コーラス、ホーンを別個のピースとして捉え、最適な位置にはめ込んでいったような流麗な起承転結が新鮮。本作においてリアムがロックンロールを唯一客体視した曲と言えるかもしれない。

ちなみに「俺は冬眠して歌う / 羽を集めながら(I hibernate and sing/While gathering my wings)」という同ナンバーの一節は、かつてダコタ・ハウスのオノ・ヨーコの邸宅に招かれた際、彼女のキッチンに掲げられていた横断幕に書かれていたメッセージなのだという。当時リアムはそれをメモっておいたそうだが、それから何年もの歳月を経て、音楽活動を一時期やめていたジョン・レノンの姿に過去数年間の自分の葛藤を重ねた時、「俺は冬眠して歌う / 羽を集めながら」というメッセージが、改めてリアムの中で特別な意味を育み始めたのかもしれない。(粉川しの)
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