現地時間10月10日に開催された「BET Hip-Hop Awards 2017」の授賞式でエミネムが披露したフリースタイル・ラップ“The Storm”が話題になっている。「トランプを痛烈に批判したパフォーマンス」とはいえ、実際のところ“The Storm”では何が歌われているのだろうか。
本記事では“The Storm”の歌詞の邦訳を紹介すると共に、現代のヒップホップ・シーンにおけるフリースタイルのあり方についても言及していく。
“The Storm”は、「BET Hip-Hop Awards 2017」の授賞式の合間に紹介される様々なアーティストのフリースタイル・パフォーマンス(サイファー・シリーズ)の映像のひとつとして披露された。
エミネムはこのフリースタイルの中で、トランプ米大統領が歴史に対して無知であり人種差別的だと指摘し、今にも核戦争を始めてしまいそうなその気質を罵倒している。
なお「Pitchfork」は、“The Storm”がフリースタイルの真髄を伝えるものであり、フリースタイルそのものの存続にとって重要なものであったことを指摘している。
ヒップホップがポップ・ミュージックのメインストリームとなってから、今回エミネムが見せたようなフリースタイルの即興的な要素はMCが成功していくには必須なものではなくなってきたといえる。
現在でもフリースタイルがMCとしてのスキルの中でも最も重要なものであることは認められてはいるものの、最近ではアルバムやレコーディングとして発表されていない歌詞をライブ環境でラップするだけで「フリースタイル」と称されてしまうことが多いからだ。
しかし今回披露されたエミネムの映像ではトランプ米大統領を罵倒するフレーズをその場でひねり出していく姿が如実に捉えられており、圧倒的な迫力を見せている。
さらにエミネムは、“The Storm”の最終ヴァースで自身のファンに対し、「もし俺のファンの中に彼(トランプ)の支持者がいるなら、地面に線を引かせてもらうよ。敵と味方は交わらないんだ」と告げていた。これについて「Billboard」は、トランプ支持者でエミネムのファンでもあるような人間にとっては、このリリックによってエミネム自身からもはやファンとは認められないという事実をまざまざと突きつけられる瞬間だったと伝えている。
実際に、トランプ支持者のエミネムファンの中には“The Storm”の映像を見てエミネムのファンをやめたというツイートを投稿しているアカウントもある。
「Billboard」でもそういったファンの声を紹介しており、「もうエミネムへのリスペクトは皆無。ファンのことをあんな風に言うなんて」といったツイートや、「政治に寄っていこうとしてるエミネムには失望した。どうせラップなんて終わってる」、そして、「俺はエミネムのファンだった。彼は地面に線を引いた。俺は下りる」といったツイートをピックアップしている。
このように公開後大きな反響を呼んだ“The Storm”だが、実際にリリックの中ではどのようなトランプ批判が繰り広げられているのだろうか。次のページでは4分半に及ぶ“The Storm”の一部を日本語訳し、掲載する。