日本一のポップアイコン・嵐が18年の歴史のすべてを注ぎ込んだ究極のコンセプトアルバム『「untitled」』を徹底解明

そして、徐々にモードチェンジしていった『「untitled」』の行きつく先が、圧巻の“Song for you”だ。長尺の組曲としてリリース前から話題になっていたこの曲は、組曲と呼ぶよりも映画のサウンドトラック、いや、もはや短編映画そのものと呼んでも過言ではない、物語がぎっしり詰まった10分強だ。オーケストラをベースに次々と移り変わっていくサウンドも凄いが、さらに注目すべきが歌詞だろう。何故ならそれは、ハワイでのデビュー(《聞き慣れないネーミング/突然乗り込んだCruiser》)に端を発する、嵐の歴史そのものを物語っている歌詞だからだ。国立競技場でのライブ(《見上げる無数のバルーンが/都会の夜空を翔けてゆく》)や、15周年で再びハワイに降り立った「ARASHI BLAST in Hawaii」(《そして、もう一度 降り立ったこの楽園(しま:ルビ)で》)など、彼らの節目節目の記憶が散りばめられたそれは、嵐の18年を追ってきたファンへの感謝のメッセージのようでもある。

嵐が本作で「無題」、「未完」と定義した今と未来は、かくも長い長い過去の物語と地続きであったということを、“Song for you”はまるで壮大な種明かしのように歌い上げ、過去と今、そして未来を一気に繋げてしまう。これほどアルバムのエンディングに相応しい嵐曲も滅多にないと思うし、この壮大な物語を、超絶コンセプチュアルでチャレンジングな長尺ナンバーをきたるコンサートツアーでどう表現するのか、今から気になって仕方がないのだ。

『「untitled」』は通常盤のCD2に収録されているユニット曲も、本編に劣らず必聴だ。嵐にとって久々のユニット曲は全4曲で、1曲目の“バズりNIGHT”は相葉、大野、櫻井のトリオ曲。タイトルからもなんとなく予想できるとおり思いっきりトランスなディスコチューンで、どこか昭和歌謡なメロディとの相乗効果も絶大、3人のワイワイガヤガヤした楽屋ノリがそのまま楽曲のリズムを生んでいるオールドスクールで愉快なナンバーだ。対する“夜の影”は松本、二宮、大野によるトリオ曲。これが“バズりNIGHT”とは真逆の思いっきりトレンディなエレクトロR&Bチューンで、ヴェルヴェットな質感を持つ声が最大限生かされた大野のボーカルを筆頭に、3人の歌声がセンシティブなニュアンスで折り重なっていく佳曲。やんちゃな男子ノリとアダルトな色気のコントラストが最高の3人+3人の2曲だ。

3曲目は相葉、二宮のコンビ曲“UB”。この曲はとにかく歌詞に注目。ジャニーズJr.の時代から、嵐の中でもとりわけ長い付き合いである相葉と二宮が、交互に互いへの気持ちを明かしていく“UB”は、「何も言わなくてもわかり合える」ふたりが敢えてここで言葉にした、そんな光景にぐっとくること請け合いのナンバーなのだ。そしてユニット曲のラストは、松本と櫻井によるコンビ曲“Come Back”。“UB”が相葉と二宮のパーソナルな関係性から生まれた楽曲だったとしたら、“Come Back”は櫻井のラップ詞をバトルのように歌い繋ぐふたりが嵐の看板を高く掲げて鼓舞する、『「untitled」』のテーマにも通じる攻めの楽曲になっている。

そして本当のラストはボーナストラックの“カンパイ・ソング”。これがもう『「untitled」』をめぐる深読みの数々を一瞬で吹き飛ばすような痛快無比のスカパンクナンバーで、 “ファイトソング”の続編(?)的なポジションでコンサートのアンコールの定番曲になりそう。今からコール&レスポンスの準備を!(粉川しの)
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