サンボマスターの初の武道館公演に向けて、3人が切り開き続けた日本語ロックの道を辿る

サンボマスターの初の武道館公演に向けて、3人が切り開き続けた日本語ロックの道を辿る
サンボマスターにとって、キャリア初となる日本武道館公演がいよいよ今週末に開催される。

開催日の12月3日は、メジャー1stアルバム『新しき日本語ロックの道と光』(2003年)がリリースされた日。それから14年の歳月を経て、新しき日本語ロックの道をただただまっすぐに歩んできたサンボマスターのロックンロールが、武道館で鳴らされることになる。きっとこの日はその場に訪れた全員にとって忘れがたい、特別な1日になると思う。

遡って2003年、山口隆(唄とギター)は『ROCKIN'ON JAPAN』のインタビューで音楽をやり始めたきっかけについてこんなことを口にしていた。

「もともとどうせやるんだったら、誰の真似でもないやつをやりたいと思ってて」


「結局ロックっていうのもどう考えてもパーソナルなもんですよ、1人対1人の。そういうことを思った時にやっぱ自分が生まれてきた環境とかをですね、そういうことをもう1回見つめ直して音楽を出すっていうことが、実はやっぱり一番質が高くてね、一番日本語ロックとしてふさわしいんではないかって思って」


山口の少年期は決して楽しいことばかりではなかったという。田舎の閉塞感の中で「死」を迎えることの恐怖感が付きまとい、高校時代はノイローゼに陥っていた。それは「高校時代は虚無に任せてずーっと空を見ていた」という木内泰史(ドラムスとコーラス)も、「放送室から自分の弾き語りを発信して、フラストレーションを爆発させていた」という近藤洋一(ベースとコーラス)だってそうだった。そんな3人が集まり「サンボマスター」として、暗い日々を塗り替えるような爆発力をロックンロールに乗せて放つようになる。

しかし、新しき日本語ロックの道程を歩み出した早々に、10代の子たちが自分たちの曲を聴いて号泣する姿を目の当たりにし、彼らは何かを感じずにはいられなかった。10代の子たちはいつかの自分たちと同じように、何かに「足りなさ」を感じている真っ最中だったから。その涙を、「足りなさ」を、どうにかしなければ。それが自分のやるべき、必要なことなのだと気付いた。つまり(こんなに大げさな言葉を使うと嫌がられるかもしれないが)、この時点でサンボマスターとしての「使命」を背負ったということだと思う。1stアルバム発売から1年が経った2004年夏ごろの気持ちを、単行本『サンボマスターは世界を変える』の中で山口は次のように振り返っている。

「僕はインナー・ミュージックをやんなきゃいかんと思ったっていうか。つまり爆裂するよりも人の心に入っていく、そういう音楽を時代に鳴らさなきゃいけないって思い始めた」


そうして発売された2ndアルバム『サンボマスターは君に語りかける』は、そのタイトルの通り聴いているひとりひとりに語りかけるような近い距離で、心に入り込んでくる作品になった。≪ひからびた言葉をつないで/それでも僕等シンプルな想いを伝えたいだけなの≫と呼びかけ、≪昨日の廃虚に打ち捨てて/君と笑う 今を生きるのだ≫と自らと共に「君」をも奮い立たせる。よくライブ終盤のMCで山口が「また明日からクソみたいな毎日が始まるけど」と口にするが、やっぱり日々というのは適わないことや不条理の詰め合わせで、「それでも生きる」という選択だけで今がある。“歌声よおこれ”や“青春狂騒曲”は、1stに収録されていた“それでもかまわない”の「その先」を提示するという意味で、人間としてひとつ歩みを進めたことを表す楽曲だった。そしてサンボマスターが語りかける「君」の対象は「あなたたち」とより広いものになっていき、3rdアルバム『僕と君の全てをロックンロールと呼べ』では≪愛と平和≫を掲げた。

「俺はロックンロールをやりたいの。15秒で人に聴き耳立てさせるかっていうのは、ロックンロールじゃないんですよ、そんなものは。ロックンロールってのは、聴いた瞬間に命がぶわーってくるものがロックンロールなんです」


その時から、私含め多くの人々の「喪失感」はサンボマスターのロックンロールによる「再生」と共にあり、どんなに暗くなったって挫けそうだって、サンボマスターはいつだって根気強く「あなたたち」を奮い立たせ続けた。≪何度だって立ち上がるんだよ 君よもう悲しまないでくれ≫と呼びかける“ロックンロール イズ ノットデッド”は、彼らが一生、それこそ死ぬまでそうあり続けることの決意が感じられた曲だった。


そんなサンボマスターとリスナーの関係性がまた少し変化したと確信したのは、昨年のROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016だ。私は最終日、夕焼けのLAKE STAGEに登場したサンボマスターのクイックレポートを書いたのだが、レポートに「もはやこの会場にいる全員が『サンボマスター』であるような気がしてくる」と記している。山口がライブで客席を全力で煽るのはいつものことだが、それに負けじと、いやそれ以上にオーディエンスのレスポンスのエネルギーが強く、そのぶつかり合いはまさに「新記録級」だったのだ。

そして今年の4月に発売されたシングルの表題曲“オレたちのすすむ道を悲しみで閉ざさないで”。ここでいう「オレたち」はサンボマスターと共にここまで歩いてきた全員。つまり、ライブでエネルギーを放ってきた「サンボマスターたち」なのである。そう、私たちはもはや≪誰もキミの魂に触れさせやしないよ≫と他の誰かに言ってあげることができる。サンボマスターから「再生」の力を受け取るだけではなく、与えることが出来るのかもしれない。完璧ではないし、まだまだ拙いし、自分はクソだという思いが拭えないままでも、新しい強さを手にした「あなたたち」を全肯定し、またさらに背中を押してくれるのが最新アルバム『YES』なのだ。


もちろんサンボマスターが武道館公演をやるタイミングは今までもあったと思うが、だからこそ、今であることにとても必然性を感じる。この日は「喪失感」に涙を流すことはないだろう。流すとしたらそれはきっと、ロックンロールのエネルギーがステージからだけではなく、武道館の客席全体からも沸き起こっていることへの感動からの涙だ。まさに「ミラクル」が起こる、起こせる。武道館公演はそれをたくさんの「サンボマスターたち」で祝すようなものになるに違いない。(渡邉満理奈)

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