椎名林檎、生放送特番でのセルフカバーアルバム『逆輸入 ~航空局~』全曲解説を観て

昨日、椎名林檎のセルフカバーアルバム『逆輸入 ~航空局~』のリリース前緊急特番がAbema TVで放送された。『椎名林檎と彼奴等による入国審査』と題された番組の内容は、今回のアルバムに関わった斎藤ネコ、村田陽一をはじめ、エンジニアの井上雨迩を迎えた生放送で12月6日(水)の発売を前にアルバム全曲の先行試聴会を行うというもの。

生放送はアルバムのコンセプトの説明から始まった。2014年に出たセルフカバー第1弾のサブタイトルが『港湾局』だったのに対して、第2弾となる今作に『航空局』というタイトルをつけた理由について、「『港湾局』で港だったのは、小林武史先生とかヒャダインくんにやってもらって、どれぐらい進んでるかな? まだかな、まだかなって待ってるのが港っぽくて。今回はずっと監視してるというか(笑)。それで航空便なんです」と説明した椎名林檎。村田とはiMessageで音源のやりとりをしながら作ったという、普段のインタビューでは語られないような細かい制作秘話が次々に飛び出したところで、いよいよ『逆輸入 ~航空局~』の全曲試聴が始まった。

楽曲を聴きながら、同時に椎名林檎と作家陣との制作秘話も聞かなければいけないので、正直、完全に集中して音源を聴けたわけではないけれど、2000年から2017年にかけて様々なアーティストに提供した曲の全てが感動的なほど椎名林檎の曲になっていた。

特に印象的だったのはドラマ『カルテット』の主題歌になった“おとなの掟”を英語でカバーしたことに関して椎名が語った言葉。「歌詞がドラマのものになってたから、それを登場人物じゃない者が歌っていい気がしなかった。松(たか子)さんの声でしか《おとなは秘密を守る》って言ってほしくないと思って」。同じようにドラマ『銭の戦争』の主題歌になったSMAPへの提供曲“華麗なる逆襲”でも、「(楽曲が)ひとり歩きしてるからどうしていいかわからなかったけど、楽器の鳴りの良いほうにした」とも言っていた。

一度、他のアーティストに提供した曲、しかも聴き手のイメージが完全にそのアーティストに染まっているような曲に対して、椎名林檎がどう向き合うか。その答えが今作では、徹底的にこだわり抜いた緻密なアレンジと演奏、その全曲の主役として圧倒的な存在感を放つ椎名林檎の歌に表れていた。体裁はセルフカバーだが、近年の椎名作品に欠かせない作家陣が集結して再構築された楽曲たちは、今の椎名林檎のアーティストとしての在り方を映し出すオリジナルアルバムにも近いものだと思う。

最後に椎名林檎は「これはインストゥルメンタルで発売すべきですね(笑)」とも言っていたが、およそ80名におよぶ国内屈指のプレイヤーたちが集結したという『逆輸入 ~航空局~』は一度や二度聴いたぐらいでは全貌を把握できない。発売は2日後。そのときは細部にまで耳を傾けて、この贅沢なアルバムを噛みしめたい。(秦理絵)

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