エレファントカシマシと『宮本から君へ』の関係、そして名曲“Easy Go”について

エレファントカシマシと『宮本から君へ』の関係、そして名曲“Easy Go”について
4月6日より、テレビ東京ドラマ25で、テレビドラマ『宮本から君へ』の放送がスタートした。
原作は1990年から1994年にかけて週刊『モーニング』誌に連載された、新井英樹のマンガ。ドラマの監督は「NUMBER GIRLの曲名をそのままタイトルにした」、「そして向井秀徳に音楽を依頼した」傑作、『ディストラクション・ベイビーズ』を撮った真利子哲也。主人公の宮本浩を演じるのは池松壮亮。で、主題歌は、エレファントカシマシが書き下ろした“Easy Go”。
という、ドラマと原作とエレファントカシマシの関係について、リアルタイムで原作マンガを読んでいた世代として、あと当時からエレファントカシマシを聴いていた世代として、ちょっと書かせていただきます。

文具メーカーの新入社員である宮本浩が、社会の理不尽やうまくいかぬ恋愛などに心身を焦がしながら、そして運命とか偶然とかのいろんなものに翻弄されながら、それでも生きることに正面から立ち向かい続けて行く物語。新井英樹がエレファントカシマシの大ファンなので、主人公の名前を宮本浩にした、ということはよく知られている。
が、これ、「あとになってよく知られた」という方が正しいかもしれない。マンガの連載は1990年から1994年だった、ということはエレファントカシマシ的には、4枚目の『生活』から7枚目『東京の空』までの時期にあたるので。
つまり、連載開始当初は、世にまだ知られていない新人マンガ家が、世にまだ知られていない新人バンドのボーカリストの名前を使った、ということだったわけです。
よって、当時『モーニング』を読んで「宮本浩て!」、「マジか!」などと騒いでいたのは、『ROCKIN’ON JAPAN』という雑誌を読んでいる人とか、その雑誌を編集している人とか、エレファントカシマシが所属していたエピック・ソニーと双啓舎(事務所ね)の人とかの、狭い界隈に限られていたわけです。

その後、ご存知のように、契約切れ等の辛酸を舐めたのちに、エレファントカシマシはブレイク。新井英樹もこの『宮本から君へ』のヒットに続き、『愛しのアイリーン』、『ザ・ワールド・イズ・マイン』、『キーチ!!』等の衝撃的な作品を次々と発表、確固たるポジションを築く。
で、2013年に出たエレファントカシマシの2枚目のトリビュートアルバムのジャケットに、『宮本から君へ』の画が使われるという形で、両者は初めて接触を果たす。
その次のコラボレーションが、ドラマ『宮本から君へ』にエレカシが“Easy Go”を書き下ろした、このたびのこの案件、ということになります。

どうでしょう。という、ここまでの流れを鑑みると、なにゆえに“Easy Go”がああいう曲になったのか、わかる気がしないでしょうか。
荒ぶっていて、速くて、猛々しくて、声も各楽器の音も歪みまくっていて、かつ陽性なメロディに乗って《神様 俺は今人生のどのあたり》、《転んだらそのままで胸を張れ》、《俺は何度でも立ち上がるぜ》と叫ぶように歌う、ああいう曲しかありえなかったのだと思う。今の宮本が、この作品のために書き下ろして歌う曲としては。
逆に言うと、『宮本から君へ』というドラマのためにも、デビュー30周年イヤーを終えて次のアクションへ向かうタイミングであるエレファントカシマシにとっても最良のチョイスなのが、この曲だとも思う。

4月6日、1回目の放送を観たら、“Easy Go”、あらゆる意味でずっぱまりだった。やっぱり、と思った。
試しに頭の中でエレファントカシマシの別の曲を鳴らしながら観てみると、よくわかる。“今宵の月のように”のようなミドルチューンは違う。“桜の花、舞い上がる道を”のようなドラマチックな曲でもない。“夢を追う旅人”みたいなどっしりと前向きな曲でも合わない。あ、“RAINBOW”なら、わりとアリかも。いや、それでも“Easy Go”には負けるな、あきらかに。

ちなみに、ドラマ主演の池松壮亮は、「僕の2割か3割は、エレカシでできてると思ってるんです」という人。
3月19日に発売になった『CUT』2018年4月号に、『宮本から君へ』に関する彼のインタビューが載っていますので、よろしければぜひ。“Easy Go”の話もしています。
詳しくはこちらを。(兵庫慎司)
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