そんなめでたい周年が重なったアニバーサリーイヤーに、これまた素晴らしいアルバム『Future Soundtrack』がリリースされた。
昨年には、アニバーサリーイヤーを迎えるにあたって、初のトリビュートアルバム『PAUSE~STRAIGHTENER Tribute Album~』をリリース。そこに集結したアーティストは、同じく20周年を迎えたACIDMANやASIAN KUNG-FU GENERATION、THE BACK HORNといった気心の知れたアーティストから、go!go!vanillas、My Hair is Badといった若手のアーティストによる斬新なカバーという、ストレイテナーというバンドが同世代から若い世代まで、どれだけ影響力のあるバンドかを見せつけた。
そして秦 基博とのコラボレーションシングル『灯り』、デジタル先行リリース『Boy Friend』、両A面シングル『The Future Is Now / タイムリープ』を経て、今回のニューアルバム『Future Soundtrack』に至る。
このアルバムは、聴けばその名の通り、「未来のサントラ」ということがわかる。それは、これからの未来とも言えるし、20年前のバンドから見た「今」という未来でもある。20年前では鳴らせなかった音を、「今」のバンドの音で未来として鳴らしている。
しかし、このアルバムを初めて聴いた時、良い意味で期待を裏切られたと思った。20年というキャリアのバンドといえば、貫禄もあるし、培った技術や経験もある。だからこそ、その時にリリースされる作品は、20年の集大成、バンドの鉄板曲が並べられた、これぞという作品になると勝手にイメージしていたが、このアルバムは違うと思った。
このアルバムは、新しいストレイテナーを感じるのだ。今までにないメロディ、フレーズ、歌詞など、ストレイテナーといえばこういう曲だよね、というThe テナーソングのようなものではなく、逆に、20年培ってきたものがあるからこその、「今」のストレイテナーが鳴らす、今までにない「新しい音楽」が並べられているのだ。
兆しは感じていた。2015年リリースの“DAY TO DAY”での攻めたイントロ、続く2016年の“シーグラス”は、炭酸飲料のCMソングにも相応しいのではと思うくらい爽やかなラブソング、“月に読む手紙”は漫画に書き下ろした、これもまた今までになかったストレートなラブソングだ。こうして、今までのテナーの鉄板とは少し違うアプローチを見せていたものが、今回のアルバムで結晶した。そう思う。
そして、このアルバムで新しいテナーを感じたこの感覚は、初めてテナーの音楽に出会った時と似ている。アルバムジャケットの十字の立体図が、2002年に設立した自主レーベル・ghost recordsのロゴの十字架を思い起こさせるのもあるが、テナーと同世代のアジカン、ACIDMAN、そしてBUMP OF CHICKENやELLEGARDEN、そのほかパンクロックなど、当時は今の若手バンドがどんどん進出するのとはまた違った空気があったと思う。その中で、テナーは少し違っていた。当時から、ホリエアツシのボーカルは、感情を抑えるようなとてもフラットな――かつ、バンドサウンドは激しく、ロックだけれどオルタナティブな、ストレイテナー独自の空気をまとっていた。ニュートラルなボーカルが醸す、どのジャンルにも当てはまらないけれど、地盤がしっかりしたロックを奏でる、そのバンドの姿勢が貫かれていた。
ストレイテナーというバンドは、聴けば多くの人が好きになるバンドだと思っている。その理由は、前述したようにニュートラルなボーカルだから。クセのない(それがクセと言えばそうだが)、鳴っている音楽とは対照的なのにパズルのようにピタッとはまる、計算されたような、そんな楽曲だから、大衆的ではないかもしれないけれど、耳心地が好いはずだ。
そういう意味からしても、今回のアルバムはとても開けていてポップになっているので、今までストレイテナーを聴いてこなかった人にも受け入れられやすいと思う。新しいことをしていると言っても、試しにとか、若さ故とかではなく、20年のキャリアと、バンドの絆に裏打ちされた盤石な「新しい音楽」が詰まっている。
だからこそ、長年のテナーファンにも新鮮だけれどちゃんと安心できる、そんなアルバムが、『Future Soundtrack』なのだ。
テナーはここに来て、また新しいスタートを切った。
これからさらに25年、30年と安定してテナーは続いていく、そう思える安心感。ホリエアツシとナカヤマシンペイのふたりから始まり、日向秀和が加入し、大山純が入った、今の4人のストレイテナーは、決してブレることのない安定感とともに、《未来をさあ見に行こう/過去も変えていく未来を/いつかきっと解るんだ/その未来が今なんだって》(“The Future Is Now”)と、過去も未来もひっくるめて、ストレイテナーの音楽を鳴らし続けていく。そう確信している。(中川志織)