昨年の『NHK紅白歌合戦』に初出場し、新時代のシンガーソングライターとしても名高いあいみょんが、昨年3月以来2度目の『SONGS』出演を果たした。今回はじっくりと彼女のクリエイティビティの源を探ることに加え、紅白の舞台裏映像、“マリーゴールド”、“君はロックを聴かない”、“今夜このまま”の3曲のスタジオライブ映像も放映され、あいみょんという表現者の現在を切り取った内容となった。
彼女の創作の源としてピックアップされたのは「岡本太郎」と「本」。実際に彼女が川崎市岡本太郎美術館と、古書店の多さで知られる神保町を訪れながら、影響を受ける表現について語った。古書店では画集を見つけ、「いいじゃないですか、『ドガ、ダリ、シャガールのバレエ』」、「あっ、アメリカン・ポップ・アート展! わたしアンディ・ウォーホルすごい好きで」と夢中になり、その後も洋書、音楽雑誌、名言珍言集など様々な本を手に取る。官能小説の棚の前では「いやらしさを保ちつつ、直接的ではなく美しく例えるという表現方法に惹かれる」と話した。6thシングル曲“今夜このまま”などには、まさにその美学が見えると言えるだろう。川崎市岡本太郎美術館では岡本太郎の作品に目を輝かせ、躊躇することなく瞬間の発想と好奇心のままに表現していく岡本太郎の姿勢に感銘を受けたことを話す。あいみょんの最新作の『瞬間的シックスセンス』というタイトルは、そのマインドを顕著に表したものと言っていい。
歌詞について彼女は「歌詞はセリフ」、「みんなの頭のなかに映像を作るための材料」と言う。古書店で違うジャンルの本に同列で胸を躍らせるスタンスにも、その思考はつながっているように思う。彼女自身が、音楽だけでなく絵画などの視覚表現にも好奇心をかき立てられるから「映像を作るための材料」としての言葉を綴ることができ、「セリフ」は実際の発言だけでなく心の声も含むから、あいみょんの楽曲は主人公の心情が生々しくダイレクトに伝わる歌詞になるのだ。
自分の直感を信じ、迷いなく伸びやかに歌い上げる彼女の言葉の説得力は強い。「3年前はライブハウスにお客さんを呼べたとしても2人くらいで、それも友達だった。『活動を始めて4年で紅白はとんとん拍子だよ』と言うけれど、苦悩や苦労は時間じゃなくて、過ごしてきた密度だと思う。その密度を『とんとん拍子』という言葉で片づけられるとすごく悔しくなる瞬間がある。マネージャーさんとわたしは、この4年間で出来ることを全部やってきた」と静かにまっすぐ語る彼女の姿と声から、その密度の濃さが伝わってきた。
だからこそ敢えて言う、まだあいみょんは活動を始めて5年ほどの、23歳のアーティストである。まだまだ進化の真っ最中であることは間違いない。さまざまな知性を蓄えていく彼女の感性が、今後どんなものに惹かれ、どんなことをひらめきを生むのかが知りたいとかき立てられる30分だった。(沖さやこ)
あいみょんの『SONGS』にこれまでの歩みを支えた信念を見た
2019.02.18 16:30