松任谷由実×あいみょん、両思いのふたりがラジオ初共演で繰り広げた貴重な無礼講トーク

先週金曜に放送された、『松任谷由実のオールナイトニッポンGOLD』は、ゲストにあいみょんを迎えての放送。題して「年の差なんて取り払っちゃえ!~無礼講スペシャル」。ふたりのトークの中から、多くの興味深いトピックが出てきて、同じシンガーソングライター同士だからこそ深いところで共感し合える部分もあり、あいみょんからユーミンへのリスペクトはもちろん、ユーミンがあいみょんをどのように評価しているのかを知ることもできて、双方のファンにとって、また、日本のポップミュージックを語る上でも、なかなか重要な回になったのではないかという気がしている。

もちろん洒脱なトークに定評のあるユーミンのことだから、堅苦しい雰囲気など皆無で、あいみょんにも終始「タメ口で」と促し、あいみょんからもどんどん堅苦しさが消えていき、普通に女性同士の楽しい会話が、最終的にふたりの個性や、共感し合う部分などを浮き彫りにしていくという、あっという間の1時間(くらい?)だった。そもそもこのふたりが初めて顔を合わせたのは、昨年末の『NHK紅白歌合戦』の時。事前の記者会見で、あいみょんが「会いたい人」として、ユーミンの名前を挙げたのが最初のきっかけとなったようだ。「(私の名前を挙げたのは)スタッフの差し金?(笑)」なんて、ジョークめかして言うユーミンに「それは本心で」と真剣に返すあいみょん。そのやりとりはどんどんあいみょんの内面へと迫るものになっていく。さすがユーミン。

『NHK紅白歌合戦』のために初めてNHKを訪れたあいみょんが、その当日の様子を映画『アリス・イン・ワンダーランド』と表現したことや、紅組、白組のたくさんのアーティストが狭い廊下を行ったり来たりする様を見て「赤血球と白血球が行き帰りしている血管みたいだと思った」と喩えたことに対して、ユーミンは「リリカル」と感想を述べると、その流れから「リリカルかつ有機的な表現が多いよね。アルバムで歌詞をじっくり読んだけど、有機的だと思う。そこがいい」と、あいみょんのソングライティングについても言及。あいみょんの、生々しくリアルな、それでいて詩的な表現を「有機的」と評するユーミンは、そこに自身との共通項を見出していたのかもしれない。だからこそ、この日のふたりのトークは、ソングライター同士のシンパシーに裏打ちされて、何げない言葉のやりとりでも、女性シンガーソングライターとして、ポップの担い手として、同一線上に互いがいることを確認するようなものとなった。

ユーミンがあいみょんを表した言葉でさらに印象的だったのは、「『紅白』の楽屋で初めて会ったときに、この人はどこを切ってもアーティストだなっていう気がした」という言葉。「個性が確立していて、こうだと思ったところはブレない。お人形さん的なところがまったくないと思ったから。そうじゃなきゃ、私も話が合わないのよね」と。ユーミンはきっと、アーティストとしてはもちろん、人間としてのあいみょんの魅力を瞬時に理解したのだと思う。その言葉を受けて、あいみょんは「『紅白』の時、ユーミンさんが言ってくれた言葉が忘れられない」と返す。その言葉というのが、(当のユーミンは言ったことを忘れていたらしいが)「モニター越しですけど見てました。あなたの活躍が私の底上げになる」というものだったという。単純に世代を超えて、とか、後継者として、みたいな話ではなくて、ひとつの時代に同時に存在しながら、お互いの音楽活動に影響をし合う関係になり得るという、その事実がすごいと思うのだ。あいみょんがユーミンに影響を受けたのは間違いないし、ユーミンもまた、そんなあいみょんの音楽が自身のこれからの活動を底上げすると言い切る。「年の差なんて取り払っちゃえ!」というこの日のタイトルは、実はユーミンのそんな思いも無意識的に表現していたのかもしれない。

あいみょんは、ユーミンの楽曲で初めて購入したのは、『あの日にかえりたい』のアナログ盤だったそうだ。当時まだレコード屋さんに売っていて手にいれたのだという。そのエピソードからユーミンは、「初めて顔を合わせた時に、あいみょんちゃんは“あの日にかえりたい”とか、“ベルベット・イースター”とか(が好きと言っていて)。それを聞いて、荒井由実の頃の自分とあいみょんが重なるような気がしました。70年代の匂いというか。別に70年代にこだわっているわけじゃないでしょうけど」と言っていたのもとても印象的で、なぜだかすごく納得してしまった。あの頃のユーミンの楽曲が持つ、若さゆえの独特の翳りや揺らぎは、どこかあいみょんの現在の楽曲に受け継がれているような気がする。たとえば“ベルベット・イースター”の歌詞は、さっきユーミンが語った「有機的」という部分で、(これもまたたとえば、だが)“マリーゴールド”に感じる「有機的」な感情表現と近しい匂いを持つ。それぞれ異なるアプローチでのポップを体現しながら、こうした共通項を持つことが見えて、またユーミンの楽曲を改めて総ざらいしてみたくなった。

でも、実は今回のラジオ共演で、ふたりが一番の共感を得たのはCM途中でのトークらしくて、だから当然その部分は電波には乗っていないのだけれど、CM明けに少し話していたところによると、ユーミンもあいみょんも、「お皿が好き」というところですっかり意気投合したとのこと。どんな料理も「お皿によって変わる」という考え方や、気に入ったものがあると買わずにいられない収集癖など、ふたりのグルーヴが一致。あいみょんが去ったあとにもユーミンは「お皿が好きというあいみょんちゃんは、すごく生活を大事にしているという気がした」と語り、その感性を「信じられる」と語っていたのが非常にユーミンらしい視点だなと思って、なんだか感動してしまった。

そして、「女性アーティストについて私が何か発言するっていうのも、高みの見物みたいで申し訳ないんだけど」と前置きをした上で、あいみょんや後進アーティストへのメッセージとも受け取れる言葉でこの日の放送を締めくくった。「いろんな女性アーティストに会う機会があるんだけど、あいみょんはなかなかすごい存在感で、ずっと10年、15年先もイメージできる感じがしました」と語り始めると、「たとえば今20年選手(の女性アーティスト)は豊作で、aikoとかは、その個性や曲の構造とか、さすがだなって思うし、(彼女たちの)その先はイメージできるよね。でも20年から先は、ほんと私が言うのもあれだけど、まあ、45年、46年やってるわけじゃない? (活動20年を超えて)そっからの20年は空気が薄くなっていってね。でも、時々見える景色っていうのは、誰も見たことのない景色になってくるから。それを励みに、長い道のりを、自分のセンスを曲げずに突き進んでほしいなって、マジで思うよ」と、あいみょんへ、そして自分自身へと語りかけるような言葉をつないでいった。ラジオ越しだけれど、ユーミンが少し懐かしいような誇らしいような微笑みで、過去と未来とを想像している表情が見えたような気がして、いつかまたどこかで、ユーミンとあいみょんの対談が実現したら面白いなとか思ったのでした。(杉浦美恵)
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