sumikaの「聴く人みんな」を“Familia”の仲間にする温かさについて

sumikaの「聴く人みんな」を“Familia”の仲間にする温かさについて
sumikaが、発売中のセカンドフルアルバム『Chime』に収録されている“Familia”のミュージックビデオを公開した。


結婚式当日に喧嘩をしてしまう新郎新婦のシーンに始まり、国籍や年齢差、性別などの垣根を超えた様々な形の「Familia」が登場する今回のMV。最終的にはsumikaの温かい演奏に背中を押されるように、それぞれが笑顔を浮かべて見つめ合ったり抱き合ったり、お互いの手を優しく握り合う。そんなハートフルなストーリーが描かれた同作は、「自分の意思で家庭や家族を作っていく、『住処』を築いていくのは家族や家庭なんだ」という想いが込められている。

今後、“Familia”はウエディングソングの定番になっていくだろう。しかしsumikaの楽曲はすでに結婚式でもよく使われていて、特に“Lovers”が人気だそうだ。≪ねえ浮気して ねえ余所見して≫、≪好きでいる理由は少し/嫌いになる理由は沢山≫――“Lovers”にはそんなドキッとさせる歌詞も含まれているが、これらの言葉は≪最後の最後の最後には/お願いこっち向いて≫に繋がっていく。恋の逆境や「それでも」の先にある、もっともっと深い繋がりとは一体何なのだろう? それはやっぱり「家族」とか、それに限りなく近い関係性なのではないか。そういった意味で“Familia”は、”Lovers”の続きのような楽曲にも思える。≪所縁はない/血縁もない/他人同士の僕らは/唯一の/選べる家族≫そんな答えを出した“Familia”で表現されているのは、「自分から選択する」ことの大きな力や、その力がもたらす奇跡みたいなものだ。

そうは言っても“Familia”は恋愛だけに当てはまる楽曲ではなく、もっと広い意味での家族の姿を捉えた作品でもある。そう感じた理由の1つが、今作のテーマ「選択」が、sumikaというバンドの今のモードに繋がっている重要なワードだということ。sumikaの音楽はその名が意味する「住処」の字の通り、安心感や親しみやすさを感じさせてくれるところがある。これはどこまでも真摯に自分たちの音楽と、sumikaの音楽を愛する人と向き合い続けて辿り着いた必然的な魅力と言える。

そんなバンドとしての揺るがない芯をしっかりと確立したsumikaは、セカンドフルアルバム『Chime』で、住処としてそこに在り続けるだけでなく、今度は自分から「あなた」の家のチャイムを鳴らしに行くという新たなスタンスを提示した。現在開催中の「sumika『Chime』 Release Tour」の初日に行われた日本武道館公演は、対大勢ではなくひとりひとりに音楽を届けようとする彼らの気持ちが今まで以上に深いものに感じられるライブだった。sumikaと聴き手の親密度は、ここに来てさらに高まっている。バンドの規模がどんどん大きくなり続けている今になってこんな感想を持つのは少し不思議な気もするが、それがsumikaというバンドなのだ。あなたがsumikaの音楽を聴いていること、そしてsumikaがあなたの元へチャイムを鳴らしに来たこと、これもそれぞれの「選択」が生んだ繋がりだろう。「選んでくれてありがとう」、「選ばせてくれてありがとう」音楽が結ぶその幸せだって「Familia=家族」の証だと言える。(渡邉満理奈)

sumikaの「聴く人みんな」を“Familia”の仲間にする温かさについて - 『Chime』『Chime』
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