古代から未来までの日本を「海族」と「山族」の対立という共通テーマに基づいて8組の作家が描く、文芸誌「小説BOC」『螺旋プロジェクト』の中で、朝井リョウが平成を舞台にした物語として手がけたのが、この『死にがいを求めて生きているの』。
物語の軸にいる智也と雄介というふたりの男性を、恐らく自身の同世代として描き、平成を総括する小説として描いたのだと思うのだが、その総括の仕方があまりにも見事だ。
「絶対」と本気で言い切れるようなものなどないと露わになってしまった曖昧な空気に包まれた時代=平成。
しかし、それは人と「違う」ことが差別や迫害や争いを生んできた歴史が、違うからこそ「繋がる」未来へと転換した、重要な過渡期だった。
平成という時代を、自分史と完全に重ねられる朝井リョウだから、そこにここまでの説得力を持たせることができたのだと思う。(古河晋)