「ユニコーン結成前夜のドキュメンタリー」というくらい濃密だった『相席食堂』奥田民生出演回を観て

「民生じゃあ!」と千鳥・ノブが「ちょっと待てぃボタン」を押しつつ「ほんまの大物呼んでどうする!?」と焦り交じりでボヤけば、大悟が「ちょっと、ちょっと待って……民生さんか?」と半信半疑でロケ映像を凝視する――。

関西圏ではお馴染みのABCテレビのバラエティ番組『相席食堂』の4月2日オンエア回。リニューアル第一弾のゲストとして登場したのは、なんと番組に逆オファーをかけたという奥田民生。しかも、ユニコーン結成ゆかりの地=広島を巡るロケの冒頭、中古楽器店「マルヤ」では同じくユニコーンのギター・手島いさむも登場(民生いわく「心細いんで付いてきてもらったんですよね」、「相席とかしたことないんですよ」)。
ノブ「ユニコーンの2人目じゃ!」
大悟「そういうドラクエ的なやつ? 最終的にユニコーンが全員集まってくる、みたいな」
ノブ「最終的に“大迷惑”?」
と異常なテンションの千鳥をよそに、VTRはバラエティ番組らしからぬ平熱感の中、ふたりはひとつひとつゆかりの場所を巡っていく。

民生がユニコーン加入以前に組んでいたバンド=READYの元メンバー・片山修が店長を務めるスタジオ「STUDIO 5150」を訪れたふたり(なお、別の場所にあった前身スタジオはこれまたユニコーンゆかりの「SUZUYA」)。
「カセットとかあるんじゃない?」という民生に応えて片山氏が取り出したのはREADYと、テッシーのユニコーン以前のバンド=Stripperのカセットテープ。
READY“KEEP ON HONEY!”を聴きながら「青いね」(民生)、「やさしい音だね」(テッシー)、「ユニコーンの最初のころとはあんま変わらん。でもビブラートがよくかかってますよ」(民生)、「このころはわりと揺れてたもんねちゃんと」(テッシー)としみじみ振り返り、さらにStripper“One Night Boogie Show”を聴き始め――たところで、さすがに大悟が「ちょっと待てぃボタン」を押して「Stripperはえぇかな」とボケてノブが突っ込む。そんな一幕がないとバラエティとして成立しないくらいに、今回の民生&テッシーの広島ロケは、まさにユニコーン前夜のドキュメンタリーそのものの価値と純度を備えたものだった。

途中、ポン菓子の老舗に立ち寄ったり、民生ファンのお好み焼き店&民生の同級生の居酒屋で「相席成立」させたり、という場面はあったものの、テッシーが働いていたライブハウス「ウッディストリート」跡地の「かつて楽屋口だった場所」を訪れ、テッシー&川西幸一(Dr)が民生をユニコーンに勧誘したエピソードを明かす場面などは、それだけで音楽番組1本作ってもおかしくない内容だった。

番組中ではユニコーンの最新アルバム『UC100V』のプロモーションもきっちり果たしていた民生だが、ユニコーン解散前のバラエティ番組に積極的に出演していた時期の性急なグルーヴ感とは異なり、あくまで自分たちの磁場とペースを乱すことなく、しかも自分の原点を「すごいもの」としてではなく「街歩きの一環」としてさらっと紹介する――という温度感に、今のユニコーンの居心地良さとタフさの理由が潜んでいるように思えた。

全国放送でなかったことが口惜しいくらいの名場面が目白押しだった『相席食堂』民生&テッシー登場回。4月9日いっぱいは「TVer」にて視聴可能なので、未見の方は今のうちにぜひ。(高橋智樹)
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