ゆずは「春夏秋冬」それぞれにこんな名曲を届けてきた

ゆずは「春夏秋冬」それぞれにこんな名曲を届けてきた
目下、弾き語りドームツアーを敢行中。路上時代の親しみやすさも、国内トップアーティストとしてのエンターテインメント性もあわせ持つ唯一無二の存在=ゆず。そんな彼らの魅力とは、やはり楽曲の、リスナーの人生に寄り添う普遍性にある。そして、それは我々の生活を包み込む季節と深くリンクしている。そこで今回は、四季折々それぞれのゆずならではの深みのある「春夏秋冬ソング」をピックアップ。季節の移ろいに重なり合う、ゆずの音楽の普遍の魅力を解明してみたい。

春のゆずを象徴するナンバーと言えば、まずは“春一番”。キャンディーズのカバーだけれど、路上時代からの持ち歌で、なんと2018年からCM曲にも起用された。そして、そんな空気感をオリジナルに昇華したのが“春三”だ。ゆずの歩みを語るとき、路上デュオがJ-POPのドームアーティストへ進化したと思われがちだが、本当はそうじゃない。《春が来た そこまで春が来たよ みんな始まるよ》。昔から普遍的なポップス性みたいなものが、ふたりのなかにはあったのだ。あとは、時間経過をリアルに描くことで切なさを倍増させる“サヨナラバス”、春の風が吹き抜ける刹那に愛しい気持ちのストーリーを回想する“春風”あたりも外せない。

もはやゆずの代名詞とも言える夏。“夏色”(夏に色をつけるって発明ですよね)という超代表曲をはじめ、爽快な“センチメンタル”や昭和歌謡テイストの“向日葵ガ咲ク時”など、夏の曲はすごく多い。で、今挙げた3曲は、すべて北川悠仁が作詞作曲している。しかも、一人称のラブソングなのだ。それぞれ場面は違えど、日常のワンシーンを主観で切り取り、「君」への想いが零れるさまを歌っている。いつ聴いても感情移入できるったらありゃしない。でも情景描写が具体的だから、やっぱりその季節になったらメロディが自然と浮かぶ。そうやって、90年代後半~2000年頃に生まれた曲たちとともに、人生を積み重ねてきた人も多いのでは?

秋ソングは少ないけれど、ここでは“地下街”と“季節はずれ”を。どちらも岩沢厚治によるナンバーだ。前者は街ゆく人を振り向かせるというより、足を止めた人が浸れるタイプの曲。《ただ風にすべての答えをゆだねてる》あたりが非常に岩沢らしい。後者は4thアルバム『ユズモア』収録曲。比喩のひとつに《秋の日》という言葉が登場するが、《少しだけ震えてる違う明日声にならず/誰の為でもなくて それぞれがまた歩いてく》など、岩沢厚治が凝縮されている。つまり、生活者の歌。しかも時の流れに乗れない人の。そして、それでも日々は過ぎていくという事実が綴られる。で、そういう大衆性を体現してしまうことが、この音楽家の一番すごいところなのだ。

ゆずのウィンターソングは、やっぱり横浜・伊勢佐木町ならではの空気というか、独特の風合いを帯びたものが多い。まず、ザ・冬の名曲“いつか”。これは何よりメロディがいい。4拍子単位の符割、特に1拍目に置かれたアクセントがめちゃめちゃ力強い。そして、《何も要らないあなたがいる それだけが僕の全て》と歌い切ってしまえる北川悠仁の人間性。この曲に救われた人がどれほどいるか。加えて、改めて聴き返すと、いろんな状況に当てはまるし、年輪が増えれば増えるほど深く染み渡る気もする。次に、“今夜君を迎えに行くよ”。クリスマスソングで、Bメロがない海外曲的な構成だ。こういう分野から逃げない姿勢も、彼らのキャリア形成においてとても大きかった。もちろん、リスナーの毎日に寄り添うという意味においても。(秋摩竜太郎)
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