【ロッキング・オンを読む】レトロスペクティブから真っさらな新章へ。ライドの新作『ディス・イズ・ノット・ア・セイフ・プレイス』を聴いた!

【ロッキング・オンを読む】レトロスペクティブから真っさらな新章へ。ライドの新作『ディス・イズ・ノット・ア・セイフ・プレイス』を聴いた! - pic by Steve Gullickpic by Steve Gullick

これはすごい。ライドの約2年ぶりのニュー・アルバム『ディス・イズ・ノット・ア・セイフ・プレイス』は、彼らの完全復活を告げるまさに会心の一枚だ。ライドと言えば5年前に再結成、自分たちの原点の轟音サイケデリックを見事に復権させた2017年のアルバム『ウェザー・ダイアリーズ』も素晴らしい出来だったが、そこで得た確信にさらにドライブがかかっているのが本作なのだ。

ザ・バーズザ・ビートルズ(中期)直系の甘く美しいハーモニーを搭載したギター・チューンだった先行シングル“フューチャー・ラヴ”の、もはや爽快と言っても過言ではないほどに醒めたリリシズムからも窺えたように、本作の彼らのタッチには一切の躊躇がない。その躊躇のなさはライドのライドたる所以であるノイズの質量においても冴え渡っていて、“15 ミニッツ”や“キル・スウィッチ”のようなナンバーでは澄み切った至高のシンフォニーと絨毯爆撃のようなノイズ、その天と地の間を容赦なく切り裂いていく。とにかく、こんなにメリハリの効いたライドのアルバムは初めてじゃないだろうか。

かつての彼らはシューゲイザーの無垢と虚無を象徴するバンドだったわけだが、それは彼らの普遍の個性ではなく、若さゆえの未熟の産物であったということがわかる。それほどまでに、熱い血肉に情熱(!)を漲らせた2019年の彼らは魅力的だ。

前作から引き続きプロデュースを務めるエロル・アルカンの功績も大きいはず。ライドの「顔」はもちろんマークとアンディのフィードバック・ギターだが、彼らの「要」がその分厚いフィードバック・ノイズを突破し、精緻でソリッドな骨格を叩き示していくローレンスのドラムであることはファンの共通認識だと思うが、常にウォール・オブ・サウンドの手前に配置されているような本作の立体的なドラムスのデザインはまさにUKダンス・ロックの名フィクサーことアルカンの技だろう。メリハリという意味では後半の異様なテンションも特筆すべきで、それは8分30秒超えのエンディング・チューン“イン・ディス・ルーム”で頂点に達する。これはもう11月の来日公演もすごいことになりそう! (粉川しの)



この記事はトム・ヨークが表紙巻頭の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
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【ロッキング・オンを読む】レトロスペクティブから真っさらな新章へ。ライドの新作『ディス・イズ・ノット・ア・セイフ・プレイス』を聴いた! - 『rockin'on』 2019年8月号『rockin'on』 2019年8月号

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