2016年のシングルデビューから3年を経て、今年12月〜2020年2月にかけてワールドツアーの東京・大阪・福岡の3大ドーム4公演を控えているBLACKPINK。今夏の「サマーソニック2019」でも、日中からZOZOマリンスタジアムのスタンド通路まで埋まってしまうような凄まじい集客ぶりの中、熱演を繰り広げていたことは記憶に新しい。本稿では、今をときめくBLACKPINKの魅力について、5つのテーマに分けて考えてみたい。
①4者4様の個性が際立つガールズグループ
韓国の大手アーティスト事務所であるYG ENTERTAINMENTが「
2NE1のデビュー以来、約7年ぶりに放つ4人組ガールズグループ」と満を持して送り出したBLACKPINKは、韓国出身のジスとジェニー、ニュージーランドで生まれオーストラリアで育ったロゼ、そしてタイ出身のリサという、それぞれティーンの頃からYG ENTERTAINMENTの研修生として表現力を培ってきたメンバーにより結成された。ファッション誌の表紙から各方面のイメージモデル、セクシー系、キュート系、ストリート系、エレガント系まで柔軟にこなす4者4様のアジアンビューティとしてのビジュアルは、当時から注目を集めていた。
②ユニバーサル規格の音楽性
ビジュアルのみならず、スキルフルなラップやメロディ歌唱のめくるめくボーカルリレー、切れ味鋭いヒップホップダンスのコンビネーションに至るまで、グループとしての持ち味を存分に発揮するBLACKPINKの音楽的魅力は大きい。楽曲プロデュースの中心は元々YG ENTERTAINMENTの1TYM所属で音楽的主導権を担っていたTEDDYによるものだが、韓国系アメリカ人のアーティストとして腕を磨き、また
BIGBANGや2NE1の数多くのヒット曲を手掛けてきた経験も加味されたTEDDYの作風は、コンテンポラリーで華やかなヒップホップやEDMのみならず、オーガニックで繊細なプロダクションも可能にしている。TEDDYのふくよかな音楽性と、それを巧みに乗りこなすメンバー個々の高度な表現力(ジェニーによるソロ曲“SOLO”も、TikTokのBGMに頻繁に使用される人気曲となった)が融合することで、BLACKPINKは世界基準の音楽表現を獲得したのだ。
③「BLACKPINK IN YOUR AREA」の概念が示すもの
フルアルバム『BLACKPINK IN YOUR AREA』(2018)のタイトルにもなっているが、このフレーズはもともとデビュー曲のひとつ“BOOMBAYAH”の冒頭からリフレインしている、BLACKPINKの活動姿勢の根本を成す概念だ。意訳すれば、「BLACKPINKはどんな場所にもいる」、「BLACKPINKはあなたの地域に侵攻する」といったところだろうか。日本語バージョンの音源やMVを制作し、来日公演の折にはメンバーも巧みな日本語を披露する。言わばK-POPの伝統ではあるけれど、その並々ならぬ努力には頭が下がるとしか言いようがない。華やかさの裏側にある、表現の射程範囲を広げるための地道な努力が、北米やヨーロッパにおけるアリーナクラスのライブや「コーチェラ・フェス」出演といった大規模な活躍に結びついている。
④膨大な動画コンテンツの楽しさ
BLACKPINKの公式YouTubeは、現在3000万人以上がチャンネル登録をしている。通常のMVのみならず、そのメイキングやダンスプラクティス動画、次なる活動の期待感を高めてくれるティザーなど、充実したコンテンツがBLACKPINKとファンとの関係をより濃く深いものにしているのだ。ときには、スタジオ入りするメンバーがあっけらかんとスッピンに近い素顔を見せていたりするのも、彼女たちをより身近に感じられて嬉しいものだろう。決定的だったのは、初めてのリフレッシュ長期休暇を動画コンテンツにしてしまったリアリティ番組
『BLACKPINK HOUSE』。ソウル市内に建てられたBLACKPINK HOUSEを舞台にしたメンバーの共同生活や、リサの故郷であるタイでのバケーションの様子などが公開された。
⑤この世界を、この時代を生きるBLACKPINKのエンタテインメント
音楽作品やライブも、ファッションモデルとしての活躍も、BLACKPINKにとっては大切な表現だ。ただしそれだけではない。この4人が揃い、切磋琢磨し、笑い、西暦2020年を迎えようとしている今日の世界を生きていることのすべてが、彼女たちの表現であり、コンテンツなのである。彼女たちはアジア発のグループとして世界を席巻するが、その表現の中で誰も排斥しない。同じ時代を生きるファンは、彼女たちがしなやかに溌剌と生きる姿に、大きな希望とエネルギーを見つけているはずだ。初となる東京ドームや福岡ヤフオク!ドーム、そして年明け早々の京セラドーム大阪2デイズでは、「今の世界を共に生きている」奇跡が、巨大なスペクタクルと化すだろう。(小池宏和)