打首獄門同好会のコンセプトは、「生活密着型ラウドロック」。「生活密着型」だから、無論、彼らのディスコグラフィを辿ると会長である大澤敦史(G・Vo)の衣食住をノンフィクションで描いた楽曲が非常に多いわけだ。その人間が生活をするうえでの基礎となる衣食住の一本を担う存在、それが「食」である。完璧にはなれない我々が踏ん張らなくてはならないとき、間違えた方向から正しい方向へ向かうとき、その行動のエネルギーとなるのが「食べ物」であることを私たちは知っているから、今日も「食べ物」を口にしているのだ。私たちが明日へ向かうとき、きっとそのエネルギーの源泉にはカレーが、ギョウザが、焼鳥が――ほかにもたくさんの食べものがあるはず。その「食べ物」についての歌をおそらく日本でいちばん轟かせているのは、言わずもがな打首獄門同好会だろう。
しかし、彼らだけではなく、実は多くのミュージシャンが食べものの名を音楽に乗せ、世に放ってきた。この記事では、そんな「食べ物」の曲もとい「飯テロソング」を、打首獄門同好会とほかの全ミュージシャンの2つに分け「飯テロ歌合戦」と題し、ご紹介。曲名を見るだけでお腹が空腹感で悶えてしまうのでダイエット中、そして夜中に見るのは要注意です!(野澤勇貴/林なな)
【全ミュージシャン】
●筋肉少女帯/“日本印度化計画”(1989年)
1曲目は、《オレにカレーを食わせろ》のフレーズでリスナーを一気に「カレーの口」にする“日本印度化計画”だ。打首獄門同好会の大澤会長が結成時から「声が似ている」と言われていた、
大槻ケンヂがボーカルを務める
筋肉少女帯の代表曲。リリースから20年以上経った2012年にはテレビ東京『ピラメキーノ』の1コーナーに起用され再ブレイクした。名実ともに世代を超えて愛される飯テロソングだ。
●Perfume/“チョコレイト・ディスコ”(2007年)
この曲が収録されたシングル『Fan Service[sweet]』がリリースされた日も2月14日で、数あるバレンタインソングの中でも代表的な一曲。チョコレイトのように甘い恋模様が、
中田ヤスタカによる秀逸な歌詞とポップなサウンドで表現されている。ファンの間では有名な話だが、この曲を聴いた
木村カエラがラジオで大絶賛し大きな話題に。今の
Perfumeの大躍進のきっかけとなった名曲。
●10-FEET/“1sec.”(2009年)
疾走感あるサウンドでフェスでもお馴染みのライブアンセム。一聴すると超クールな英詞だが、和訳してみると「チーズが乗ったアンチョビ」や「でっかいコーラ」、「顔と同じ大きさのステーキ」を飲み食いして太ってしまったというまさかの内容(笑)。力強さとカッコ良さ、ユーモアがハイレベルで共存する、
10-FEETらしさが詰まった1曲だ。このハイカロリーなものを食べすぎて太ったというのは、彼らがアメリカツアーを回った際の実体験である。
●ZAZEN BOYS/“ポテトサラダ”(2012年)
とにかく《ボールにいっぱいのポテトサラダが食いてえ》という欲望がシンプルに綴られた楽曲。その真っ直ぐ過ぎる歌詞は、聴いていて途中で「もう食べなよ……」と思ってしまうほど。しかし、曲を聴き終わった時にはあなたも思っているはずだ。「ボールにいっぱいのポテトサラダが食いてえ!」と。2番には《ドンブリいっぱいのしじみ汁》が出てくるが、こっちは酒を飲んだ次の日にマジで沁みる。
●キュウソネコカミ/“空芯菜”(2013年)
ヤマサキセイヤ(Vo・G)が、三宮の駅前にある中華料理屋で初めて食べた空芯菜の美味しさに感動して作った魂のロックナンバー。曲の序盤では《油で炒めただけなのに!》、《ぺろりと一束いっちゃうよ!!》とシンプルなのになんでこんなに美味しいんだ!?という空芯菜の素晴らしさを叫んでいるが、その感動がMAXに至ったラストではなんと《空心菜食ってそして/争いの世の中変えようよ》と世界平和を歌うまでに発展している。
●グループ魂/“彦摩呂”(2015年)
《う!み!の 宝石箱や!》、《あ!じ!の! IT革命や!》、《味の郵政民営化や~~!》でわかるように、グルメレポーター・彦摩呂のことを歌った曲。ミュージックビデオでは、彦摩呂がフライドチキン、カレーライス、スパゲティなどのグルメをめちゃくちゃ美味しそうに食べている。この究極の飯テロMVをダイエット中や深夜に観るのは自殺行為に等しいと言える。
●ORANGE RANGE/“SUSHI食べたい feat.ソイソース”(2015年)
4分17秒の曲の中に、《寿司食べたい》と《SUSHI食べたい》が計42回。サブリミナル的に繰り返されるこのフレーズは、曲が終わるころにはしっかりと脳にこびりついて離れない。気づいたら「寿司食べたい……」と呟いていた、という経験がある方も多いのでは? 日本人なら「やっぱりこの世の終わりの日には寿司を食べたい!!」と思わせてくれる至極の「寿司ラブ」ソング。
●くるり/“琥珀色の街、上海蟹の朝”(2016年)
岸田繁(Vo・G)がこれまで封印してきたというシティポップ/ブラックミュージックに受けた影響を爆発させたヒップホップナンバー。今はもう会えない「君」との思い出を懐かしむ歌ありながら、サビの《上海蟹食べたい》というポップなフレーズがシリアスにし過ぎず、琴線をガツンと揺らす名曲へと昇華させている。ここまで紹介してきた飯テロソングとは食べ物を使う角度が異なるが、当然外せない一曲だ。
●PAN/“ギョウザ食べチャイナ”(2016年)
庶民の味方「餃子の王将」とコラボしたPANの代表曲のひとつ。《ギョウザ 食べチャイナ》で沸き起こるコール&レスポンスは、ライブでもすっかりお馴染みに。「餃子の王将」箕面半町店で撮影されたMVでは、コミカルなダンスと共に彼らなりの美味しい餃子の作り方を教えてくれている。ちなみにこのMVの監督は、寿司くんこと
ヤバイTシャツ屋さん・こやまたくや(G・Vo)が担当した。
●SILENT SIREN/天下一品のテーマ(2018年)
ひなんちゅ(Dr)が、学生の時に「天下一品」でアルバイトしていたことがきっかけで、メンバー全員でCM出演。その際に楽曲提供されたのがこの“天下一品のテーマ”だ。《餃子定食 ねぎトッピング/チャーハン定食 麺大盛りで》と、見ているだけでお腹が空いてくる飯テロな歌詞が並ぶ天一同様「こってり」な楽曲。MVでは、メンバーが実際に天一の制服で調理、接客する姿が描かれている。メディア露出に積極的な社長もモチロン出演している。