Official髭男dism“Pretender”が2019年を代表する新たなスタンダートとして鳴り響いた理由を考える

  • Official髭男dism“Pretender”が2019年を代表する新たなスタンダートとして鳴り響いた理由を考える - 『Pretender』通常盤

    『Pretender』通常盤

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Official髭男dismの“Pretender”は、まさに「今年を象徴する1曲」と言えるほど、いろんな場所で耳にする機会があった。テレビやラジオから、もしくは街を歩いている時にあの煌めいたイントロが流れてくると、思わず胸が躍り出すような気持ちになる。そしてその度に、髭男の音楽が大勢の人たちの人生に寄り添うものになったことを実感した。もちろんそれは数字にも反映され、12月に発表された「第1回 オリコン年間ストリーミングランキング 2019」の作品別売上数部門では、期間内(集計期間:2018/12/24付~2019/12/16付)再生数約1億679.3万回を記録し、堂々の1位に輝いている。“Pretender”という曲がこんなに遠くまで響き渡り、多くの人に愛聴された理由について改めて考えてみたい。

何よりもまず、この曲の「一度聴いたら耳に残るメロディの強さ」は大前提としてあるだろう。もともとは映画『コンフィデンスマンJP』の主題歌として書き下ろされ、最初に映画チームへ提出したデモ音源はサビも違うメロディだったという。そこからメンバーのルーツにはなかったUKロックの要素も入れつつ、J-POPの旋律の美しさや自分たちのカラーも足していき、今の形に仕上がった。髭男のカラーというのはつまりピアノポップバンドであること、そして揺るがないばかりかますます強度を増している「グッドメロディ」へのこだわりだ。求められているものを取り入れ、新しい音楽をインプットしながらも、自分たちの本質はしっかり守るというバンドのスタンスが、髭男をここまで大きくしてきた。そのなかで、藤原聡(Vo・Pf)の感覚を頼りに生み出されるグッドメロディが大勢の人々の心の琴線とガッチリ重なり、髭男の本質部分に改めて焦点が当たったのが“Pretender”という楽曲だった。

またこの曲は、歌詞に多くの共感を集めた最大の理由がある。曲中に出てくる「僕」と「君」は気軽に「好き」と言えない複雑な関係性で、運命の相手でなければ永遠も約束もない。そんな辛い事実を前にして《僕にとって君は何?》と自問するものの、その答えをあえて出さないまま愛の言葉に代わる《「君は綺麗だ」》がサビの最後に置かれている。これが例えば「それでも君が好きだ」だったら、曲の魅力が全く違うものになっただろう。《「君は綺麗だ」》であることがこの曖昧な恋愛の切なさをより浮き彫りにし、たったひとつの確かな真実を輝かせる。

今の時代は特に、決まった形や枠に当てはまるのがナンセンスになり得ることもある。《誰かが偉そうに/語る恋愛の論理/何ひとつとしてピンとこなくて》なんて歌詞もあるが、既存や定型と比べて割り出した「事実」よりも、その人の中にある「真実」が大切で尊重されるべき世の中だ。そもそも、私たちが実際に生活の中でストレートな想いを表現するシーンなんて多くもないだろう。そういった意味で、この曲があえて曖昧さに決着をつけないまま《「君は綺麗だ」》という真実だけを残しているのは、今の時代を生きる人々の心情をよりリアルに映し出した新しいラブソングの傾向とも言える。

ちなみに、“Pretender”の歌詞が本当のところどんなストーリーなのかは詳しく明かされていない。『ROCKIN’ON JAPAN』2019年6月号のインタビューで藤原が「こういうふうに聴いてほしいとか、こういう歌なんだって耳にドレスコードをかけるようなことはしたくない」と語っていたように、髭男は歌詞の意味をわざわざ説明するバンドではなく、あくまで解釈は聴き手にゆだねられている。これもまた、“Pretender”が多くの人の心に寄り添うことができた理由のひとつなのかもしれない。(渡邉満理奈)

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