カーリングシトーンズが僕らを少年に戻してくれるのはなぜなのか? 彼らの圧倒的ヒーロー性の秘密

カーリングシトーンズが僕らを少年に戻してくれるのはなぜなのか? 彼らの圧倒的ヒーロー性の秘密
寺岡シトーン(寺岡呼人)/奥田シトーン(奥田民生)/斉藤シトーン(斉藤和義)/浜崎シトーン(浜崎貴司)/キングシトーン(YO-KING)/トータスシトーン(トータス松本)が「6人全員フロントマン」として快活なバンドサウンドを響かせるカーリングシトーンズ。

それぞれ80〜90年代からロックシーンの興隆を支えてきた、ベテランと呼んで差し支えない50代アーティスト6人衆がしかし、「貫禄」とか「堂々」といったワードもレイドバック感も微塵も近寄らせることなく、全身全霊傾けて音楽を楽しんでいる――そんな姿に、既存の「ロックスター」像とはまったく別種のヒーロー性を感じるのは、僕が彼らのすぐ下の40代後半世代だからだけでは決してないと思う。

《もしも誰かがすべってしまったら/全力ですべって 外に押し出すぜ/時には真ん中において 目立たせよう》(“スベり知らずシラズ”)

大人になることとは自らの限界と諦めを知ることだ、というお題目がまことしやかに語られるなか、カーリングシトーンズでの6人は長いキャリアとその経験ゆえの分別を十分にわきまえながらも、ラモーンズよろしく新たなバンドネームを背負うことで自らの「ベテラン感」も痛快になぎ倒し、あたかも何一つ諦めていない少年のようなイノセンス(と熟練の技)をもって極上のロックンロールを奏でてみせる。自分たちの「すごさ」を誇張することなく、6人でボーカルを回し、ソロを回し、誰よりも自分たちが楽しみながら、どこまでも「すごい」ロックを聴かせるその姿は、僕らがロックに惹かれる理由そのものを体現しているようにも思えてくる。

《歩いて歩いて 泣くだけ泣いたら/強く強く心が燃える/だって生きているんだから》(“涙はふかない”)

この夏には仙台、札幌、カーリングの聖地である・北見、さらに今年誕生の新会場・東京ガーデンシアターを巡るツアー追加公演も開催。若者には絶対に真似できない、しかし確かに「永遠の少年性」に裏打ちされたカーリングシトーンズのマジカルな音楽は、日本のロックの何かを変えるのかもしれない――そんな途方もない予感が、この音を聴いていると自然に脳内に滲んでくる。(高橋智樹)
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