《たまに泣いてしまって/孤独を飼ってしまって/それも悪くはないね/この夜を上手に歩けたなら/君にも朝が降るだろう》(“朝が降る”)
アンダーグラウンドとされやすいネット文化で育ってきたひとりのアーティストであることに誇りを持って、先へ進んでいきたいという思いが曲名に込められた『おとぎ』収録の“僕らまだアンダーグラウンド”を彷彿とさせるネガティブな自身を肯定したリリックだ。これまでのEveは、子供の頃に描いた理想の大人像とかけ離れた自分では、過去の自分に合わせる顔がないと苦悶していたように思う。ところが、“朝が降る”で確信を持って伝えたのは、ネガティブなら無理に変わろうとすることなく、等身大のまま、光を見出だしていけばいい、ということ。そこで初めて、離れていた過去と現在の自分は手を繋ぎ、一緒に道を開いていく。《どこまで繋がってるかな/どこまで潜っていけるのだろう/痛い夜だって、昏い夜だって/ずっと貴方を探す旅の途中》(“朝が降る”)。ほかにも、『Smile』には、光を見せる楽曲が並ぶ。
また、打ち込み中心のギターロックを主軸としたこれまでの作品と打って変わり、ヒップホップ、EDM、エレクトロニックといった洋楽のエッセンスが加わったサウンドで構築されていることも革新的。“闇夜”(TVアニメ『どろろ』第2期エンディングテーマ)を起点として、ダイナミックな“LEO”、“いのちの食べ方”などは、あくまで、ギター以上に、シンセ、ドラム、ベースなどの生音を全面に押し出すアプローチによって、音像に奥行きを生み出している。だからこそ、例えば、ポップな“心予報”(ガーナチョコレート「ピンクバレンタイン」テーマソング)が、より一層弾けているように感じられるということもあるだろう。
自身を肯定した先に、幸運を掴めることは理想的。しかし、『Smile』は、何人もの新しい人に出会えたとしても、感謝することを忘れた途端、得た幸せは手のひらからこぼれていくという重いメッセージが込められたラストの“胡乱な食卓”をもって、幕を下ろす。それは、ひとつ間違えれば、同曲に登場する主人公のように堕落した未来を歩んでいく可能性があることを暗示している。(小町碧音)