私たちが最初に触れることができたのは、3月に配信された“Dropout”だろう。アコースティックギター&コーラスを重ねた奥行きのあるEDMサウンドに乗せて、英語の歌詞が歌われている。歌詞の内容はFukase(Vo)の過去を思わせるもの。全体として、End of the World名義で海外へ発信するなかで得た経験がSEKAI NO OWARIにも影響を与えつつあるように――両者の境界線がなくなりつつあるように感じた。
一方、“umbrella”は80~90年代のJ-POP、歌謡曲的に通ずるものがある曲。雨が降ったときに地面から上がってくる匂いをペトリコールと言うが、メロからあれに近い懐かしさを感じる。個人的に大きく驚かされたのが、Fukaseのボーカル。特に音域の高い冒頭は、初めはFukaseだと気づかなかったくらいだ。声を張るというよりも抜くような歌い方で、それにより響きの成分が増え、声質の透明感がより活きている。ビニール傘目線の歌詞がかえって切なく聴こえる。
そしてカップリングの“周波数”は今回初収録の新曲。TOKYO FM開局50周年アニバーサリーソングではあるが、彼らの信じる音楽の魔法について歌われた曲であり、このタイミングでリリースされることに大きな意味を感じる。転調を重ね、のびやかに羽ばたいていくメロディが私たちを別の世界へ連れ出してくれるようだ。
これまでセカオワが鳴らしてきた音楽を土台にしながらも、「集大成」的なところに留まらず、新しいこともやり、歌詞では核心的な部分に踏み込んでいる。今のセカオワのしなやかさを感じさせる、必然のシングルだ。(蜂須賀ちなみ)
6月30日(火)発売の『ROCKIN’ON JAPAN』2020年8月号にSEKAI NO OWARIのインタビューを掲載
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