年末年始特別企画! ロッキング・オンが選ぶ、2020の「年間ベスト・アルバム」TOP10を発表!(第7位)

年末年始特別企画! ロッキング・オンが選ぶ、2020の「年間ベスト・アルバム」TOP10を発表!(第7位)

2020年も残りあとわずか。

新年へのカウントダウンが盛り上がるこのタイミングで、ロッキング・オンが選んだ2020年の「年間ベスト・アルバム」ランキングの10位〜1位までを、毎日1作品ずつ発表していきます。

年間7位に輝いた作品はこちら!
ご興味のある方は、ぜひ本誌もどうぞ。


【No.7】
『SHORE』/フリート・フォクシーズ


年末年始特別企画! ロッキング・オンが選ぶ、2020の「年間ベスト・アルバム」TOP10を発表!(第7位)

特異な年に光が差し込む、至高のマスターピース

17年のアルバム『クラック-アップ』のスケール感は、今でも感動的だ。日本通で知られるロビン・ペックノールドの思いが炸裂し、その上ジャケットが東尋坊の一角を撮った日本人写真家のものだったこともあり、我々には特別な1枚となった。しかし本誌12月号のロビンのインタビューでは、そのツアーの終わりでは疲弊し、本作を作り始めることで元気づけられたと語られているものの、そこで待っていたのは今回の新型コロナ禍でありロックダウンだった。

安易に希望やポジティブな光景を描くことなど出来ない状況の中で音をまとめ、言葉を紡ぎ出すのがいかに困難であったかもインタビューで語られているが、それはアルバムを聴いていると本当に身近に感じられてくる。グリズリー・ベアのメンバーなどのゲストを迎えつつも、基本的にはロビンとプロダクション・エンジニアのベアトリス・アルトラの持つスタジオでソロ・アルバム状態で作られているわけだが、そうしなければならなかった必然性と説得力がアルバムを通してはっきり見えてくるところがすごく、これまでのアルバムで持った方向性のすべてが洗練され完成度を高めてもいる。

自身のヒーロー、アーサー・ラッセル、カーティス・メイフィールドニーナ・シモン、ヴァン・モリソン、サム・クック、ザ・ローチェス、ジョアン・ジルベルト等々の曲を聴きながら、彼の言うところの“死を直視し、生命を祝福”する感触をすべての楽曲に吹き込んでいく。まず根本的に各曲のメロディのクオリティが高く、“Young Man’s Game”のような祝祭感に満ちた曲も楽しいわけだが、それらを色づけるボーカル・ハーモニーを始めサウンド・デザインが非常に巧みで、本作を象徴する名曲のひとつ“A Long Way Past The Past”でのハーモニーとホーンやギターが並行したり自然に枝分かれしていく感触が作り出す快感は格別。ひとりの作業ならではの密室性が感じられる瞬間ももちろん濃厚ではあるが、それを巧みにスパイスとすることで、より大きな快感と達成感に導かれていく。『ペット・サウンズ』録音時のブライアン・ウィルソンのカウントを使った“Cradling Mother, Cradling Woman”から、最後に置かれたタイトル・トラック“Shore”が終わった瞬間に包み込まれる豊潤な満足感は、今年のベストを争うにふさわしい大傑作だ。(大鷹俊一)



「年間ベスト・アルバム50」特集の記事は現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。


年末年始特別企画! ロッキング・オンが選ぶ、2020の「年間ベスト・アルバム」TOP10を発表!(第7位) - 『rockin'on』2021年1月号『rockin'on』2021年1月号
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