プリンス、その早すぎる死から5年。絶え間なくポップ・ミュージックの未来を作り続けた、音楽界の事件史とも呼べる“ジ・アーティスト”の30年史、ここに公開!

プリンス、その早すぎる死から5年。絶え間なくポップ・ミュージックの未来を作り続けた、音楽界の事件史とも呼べる“ジ・アーティスト”の30年史、ここに公開!

「海賊行為がここまで横行する前は、僕らもオンラインで収益を得ることができた。だけど今、稼ぎをあげられてるのは電話会社と、AppleにGoogleくらいのもんだろ。まるでゴールド・ラッシュか車両強盗だな。とにかく限度ってものがないんだ」


最終作であった『ヒット・アンド・ラン・フェーズ・ツー』から6年、プリンスのニュー・アルバムが届けられる。今回リリースされる『ウェルカム・2・アメリカ』は偉大な音楽家の死後に雨後の筍のように乱発されるデモや未完成音源を仕上げた作品集の類とは異なり、2010年に彼が完成させ、お蔵入りとなっていた正真正銘プリンスのスタジオ・アルバムであるというのだ。僥倖、まぎれもない僥倖である。

2010年といえば、彼が全米初登場1 位を初めて獲得した2006年の『3121』を皮切りに、リリース形式を模索しつつ毎年作品を発表し続けた怒涛の時期に、一旦のピリオドを打った『20ten』をリリースした年。今回掲載のインタビューは翌2011年に行われたもので、インタビュー嫌いで知られるプリンスがここでは極めて上機嫌に自身のキャリアの過去、現在、未来について実に鋭い発言を残している。

また、インターネットや著作権、巨大企業による利益の寡占化などについて述べている部分がそのまま『ウェルカム・2・アメリカ』から先行発表されたタイトル・トラックのリリックとリンクしている点も興味深い。

この曲の中で、プリンスはこんな言葉を紡いでいる。《iPhoneの機能のせいで気が散る(その状況を直すためのアプリを入れなよ)言い換えるときれいな顔の子に気を取られているんだ(誰かに見張られているよ 見てる 見てるんだ)》《いまどきの音楽が後世まで残ると思う?(寡占企業を解体せよ 全ての寡占企業を解体せよ)》。

プリンスは2010年時点において、2010年代のディケイド、そしてこの2021年現在の世界までを言い当ててしまっているのだ。もちろん、言葉に限らず、少ない音数ながら緊張感の張り詰めたグルーヴを編みつつ女性コーラスを効果的に配したサウンドも、極上の一言。この密室的な音像はやはり唯一無二のものであると唸らずにいられない。

インタビュー終盤、「過去を振り返ってノスタルジックな気分に浸ることはあるか」と問われたプリンスの圧倒的な自信に満ちた答えを見る限り、彼の音楽の先進性は何もかもが必然であったのだと思い知らされる。(長瀬昇)



プリンスのインタビューは、現在発売中の『ロッキング・オン』6月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。


プリンス、その早すぎる死から5年。絶え間なくポップ・ミュージックの未来を作り続けた、音楽界の事件史とも呼べる“ジ・アーティスト”の30年史、ここに公開! - 『rockin'on』2021年6月号『rockin'on』2021年6月号
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