えっ? トム・ヨークが5月22日にいきなりSNSで告知。「ザ・スマイル。ジョニー・グリーン・ウッド、トム・ヨーク、トム・スキナー。パフォーマーズ/ミュージシャンズ。ナイジェル・ゴッドリッチとコラボ」と。なんと、突然の新バンドでグラストンベリー・フェスティバルの“Live At Worthy Farm”の特別枠でデビューを果たしたのだ!
トム・スキナーはジャズ・バンド、サンズ・オブ・ケメットのドラマーで、ザ・スマイルという何とも皮肉なバンド名は詩人テッド・ヒューズの詩から取ったもの。ライブ中にトムも「レディース&ジェントルメン。ザ・スマイルです。ただ“スマイル”とは言っても、朗らかな笑顔ではなくて、毎日僕らに嘘を付く男のスマイルです」とめっちゃ不気味な顔で言っていた。
バンドは30分間で8曲も演奏。すでにバンドがセットリストを発表しているが、その中から「明日はどうなるか分からない」と正に“今”を歌う“We Don’t Know What Tomorrow Brings”と、最後に演奏された、よりレディオヘッド的な不可解な終わりを暗示し、だからこそむしろしっくりくる“Thin Thing”の映像が公開されているので、見逃した方は要チェックだ。
まるでパラシュートが落下したような屋根の巨大テントにこの3ピース・バンドが登場。1曲目の“Skating on the Surface”は、レディオヘッドが2012年の『ザ・キング・オブ・リムス』ツアーで演奏していたレア曲で、不穏な空気を煽るレディへ的幕開け。トムとジョニーは、ギター、ベース、モーグ・シンセサイザー、ピアノを忙しく取り変え、ジョニーは新たなリフを弾きまくっていたが、この日何より驚きだったのは、とりわけ3曲目“You Will Never Work in Television Again”など、セット中盤で2人が激しくギターをかき鳴らしていたこと。ポスト・パンク的で、一周してギター・ロックに戻ってきたのか?と思わせる内容だったのだ。
そもそもトムはレディヘ以外のプロジェクトでは、ロック・サウンドの解体を目指していたように思うのだが、今回は3ピースだし、ロックの解体というよりは、ロックに新たに立ち向かうような瞬間があったのだ。たった8曲の中で、レディヘ的、トムのソロ的サウンドも交差していたので、ここからどこへでも行きそうな期待も膨らむバンドだ。他のプロジェクト同様にレディへとも地続きなのだと思う。
すでに公式サイトもあるので、これから間違いなく先があるということ。レディヘもいきなりTikTokを始めたし、何やらざわざわしてきた! (中村明美)
ザ・スマイルの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。