スクエアプッシャーの絶え間ない音楽的挑戦を再確認せよ。原点にして至高、長らく再販が待ち望まれていたデビューAL、遂にリリース!

スクエアプッシャーの絶え間ない音楽的挑戦を再確認せよ。原点にして至高、長らく再販が待ち望まれていたデビューAL、遂にリリース!

来日公演は再び延期となってしまったが、1996年にリフレックスからリリースされたスクエアプッシャーのデビュー・アルバム『フィード・ミー・ウィアード・シングス』が再発される( 6月4日世界同時リリース予定)。販売終了後、長らくCDやLPは生産されておらず、DL販売やストリーミングも行われていなかった本作が、25周年という節目に本人の監修のもとオリジナルDATからリマスタリンされた(EP収録曲2曲も追加)。

本作直後にワープから初のEP『ポート・ロンバス EP』を発表し、現在に至るまでレーベルの代表的なアーティストとなるが、若きトム・ジェンキンソンによるエキサイティングなベース・プレイと、ドラムンベースを中心にしたエレクトロニック・ミュージックとの融合が、ズバリ提示されている。まったく色褪せることのない、豊穣なアルバムだ。リフレックス創設者のひとりであるリチャード・D・ジェイムスとの、悪ノリの絶えなかった友情の原点もここにある。また日本盤には、当時リチャードが本作に寄稿した文章の対訳も封入される。

目下の最新オリジナル・アルバム『ビー・アップ・ア・ハロー』は、若きトムが音楽活動を共にしていた大切な友人の死を背景に、古い音楽機材も用いて制作された経緯があった。20代の青春を音楽的に回想していたことと、今回のリマスター再発は地続きになっているように思える。

また、生演奏と緻密なエレクトロニック・ミュージックとの融合はスクエアプッシャーの基本形ではあるが、そのバランスは絶えず変化してきた。自らの表現に制限を課すように生演奏に振り切れたアルバムを作ったり、逆にエレクトロニックな作風に方向転換したり、バンド・プロジェクトに挑んだりロボットに楽器を演奏させたりした。そんな変化の連続こそが彼のキャリアだ。

己に制限を課すことなく、伸び伸びと自由なクリエイティビティを発揮したアルバムと言えば、この『フィード・ミー~』以外では2004年の『ウルトラヴィジター』くらいしか思いつかない。ある意味では、原点にして至高。ぜひ触れておいてほしい重要なリリースである。(小池宏和)



スクエアプッシャーの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

スクエアプッシャーの絶え間ない音楽的挑戦を再確認せよ。原点にして至高、長らく再販が待ち望まれていたデビューAL、遂にリリース!  - 『rockin'on』2021年7月号『rockin'on』2021年7月号

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