「僕は2020年という年にアメリカという国に暮らしていたけど、これほどまでに悪趣味でグロテスクな筋書きのストーリーが目の前の現実として起きてるような感覚を味わったことがなかったし、まるで一連のディストピア関連の映画を観ているみたいな気持ちだった」
これほどの熱量でカオスをぶちまける作品に、パンデミックに苦しむ時代に出会えることは、ある意味幸福だ。『バットマン』のティム・バートン監督ものを始め幅広い作品を手掛けるアメリカ映画音楽界の第一人者であり、元オインゴ・ボインゴのリーダー、ダニー・エルフマンの37年(!)ぶりのソロ・アルバム『Big Mess』は聴くものを圧倒する。
困惑、憤怒、自嘲、憎悪、願望といった感情が、計算や構成を無視したかのごとき音霊となって突き刺さってくる快感に出会ったのは久しぶりな気がする。しかも映画音楽という、現代エンターテインメントの極とも言える分野の頂きにいる人物からの発信にも大いに勇気づけられる。
これだけのアルバムを作り出すために、どれほどの熱量と思索が必要であったか、ダニーのビート感溢れる率直な言葉からも伝わってくる。(大鷹俊一)
ダニー・エルフマンのインタビューは、現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。