デーモン・アルバーン、奔放なクリエイティビティを持つ彼が選んだ次のテーマは第二の故郷への「恋文」――7年ぶりのソロ作で目指す新たな音楽的ベクトルに期待!

デーモン・アルバーン、奔放なクリエイティビティを持つ彼が選んだ次のテーマは第二の故郷への「恋文」――7年ぶりのソロ作で目指す新たな音楽的ベクトルに期待!

昨年ゴリラズの『ソング・マシーン』シリーズ第一章を完結させたばかりのデーモン・アルバーンだが、その多面的な音楽世界から新たな成果物が登場する。

11月に発表される7年ぶりの2ndソロ・アルバム『The Nearer The Fountain, More Pure The Stream Flows』がそれで、基盤となるライブ・プロジェクトは昨年5月の欧州公演で始動するはずだった。コロナ禍であいにく一連のコンサートは延期となったものの、ロックダウン期間中に個人スタジオを新たに建てたデーモンは、管弦楽団/声楽家らとのワークショップを通じて蓄積してあった音源やアイデアをじっくり磨き続けていたようだ。

前作ソロ『エヴリデイ・ロボッツ』はアーバンなビート・メイクとフォークの融合が印象的だったが、自然との豊かな交感を綴った19世紀英国のロマン派農民詩人ジョン・クレアの詩「Love and Memory」の引用をタイトルに冠した今作は、アイスランドの手つかずの景観と峻厳な風土・気候がモチーフになっている。

現時点で公開されているタイトル曲のアンビエント&ビートレスなサウンドスケープとストリングスのたなびき、風を思わせる女性コーラスが醸すムードはなるほど「悠久」の二文字がふさわしいし、歌声にこもった情感も含めこの新たな音楽的ベクトルに期待が募るばかりだ。ブラー人気が頂点に達していた96年、マスコミと衆人の目を振り切ってデーモンが「大脱走」した先がアイスランドだった。以降『ブラー』、『13』の録音の一部をおこない、映画『101レイキャヴィーク』サントラを制作する等、かの国は彼の第二の心/精神の故郷となった。

その意味で25年の交流を経て生まれた「アイスランドへの恋文」とでも言うべきパーソナルなアルバムになりそうだが、デーモンがアイスランドを愛する理由のひとつである孤独と隔離の感覚を奇しくも世界中が味わった1年の後だけに、その内省の響きはより深く普遍的に私たちの心を打つことになるんじゃないかと思う。(坂本麻里子)



デーモン・アルバーンの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

デーモン・アルバーン、奔放なクリエイティビティを持つ彼が選んだ次のテーマは第二の故郷への「恋文」――7年ぶりのソロ作で目指す新たな音楽的ベクトルに期待! - 『rockin'on』2021年8月号『rockin'on』2021年8月号

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