【JAPAN最新号】OSHIKIKEIGO、探究心と大衆性が育む珠玉のポップス

【JAPAN最新号】OSHIKIKEIGO、探究心と大衆性が育む珠玉のポップス
仕事柄どうしても、新しいアーティストに出会うと世代感や地域性、どういうシーンの文脈から出てきたのか?といった系統立てた考察をせざるを得ない場合がある。こういうテキストを依頼された場合なんかは特に。ただ、その結果として「よくわからないな」「というか、考えても意味ないんじゃないか」「とにかく気持ちいいんだからそれでよくないか?」と職務放棄したくなるケースが稀にある。今回のOSHIKIKEIGOなんて特に。


活動開始が去年、楽曲をリリースし始めたのは今年に入ってからというソロアーティストであり、ニューカマーとして頭角を現すやいなや、7月にリリースした“メイラード”がアニメ『フェルマーの料理』オープニング主題歌を務めるなど、その音楽は瞬く間に世の中へ浸透しつつある。ここまでの楽曲を振り返ると、ソウルやジャズの要素を主とした“モナリザ”、ハイテンポながら夢見心地な80'sポップス調の“ダサめのステップ”など、シーンの潮流をしっかり押さえながらも作風は幅広い。


随所にチョップ等でフックをつけていたり、アンサンブルを構築する楽器の種類や音色のセレクト、響きや音量やバランスまでも一曲の中で自由自在に変化させていったりと、とにかく細部まで入念に構築されたものであることもよくわかる。加えて、メロディやオケの質感とマッチするよう言葉選びされたリリックも絶妙で、何か明確な情景やメッセージを伝えようというよりもまず音として耳に飛び込み馴染んでいく不思議な魅力を感じる。元々はコンポーザーやアレンジャー気質が強い人らしいのだが、9月にリリースされた“ユダ”でのやや気だるくビターな歌声などシンガーとしての魅力も非凡。そして何より全曲がきちんとポップスとして届くようデザインされているところに、並々ならぬ可能性を感じずにいられない。


10月には既存曲に新曲を加えたミニアルバムのリリースを控え、11月には大阪・東京で初ライブも開催。新曲群のデモを聴く限りでも、ここから加速度的に駆け上がっていく可能性は極めて高そうで、見落とし厳禁だ。

文=風間大洋
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年11月号より抜粋)


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