アートワークやMVなど視覚面から受ける印象は、端的で言えばサブカル系か。カウンター的な意味合いのサブカルというよりは、ネットやアニメ等と結びついたアングラ的なニュアンスの強いそれなのだが、そういう表現とセットになりがちである性急な展開や突飛なフレーズなんかはほとんど登場しない。コードストロークと4ビートや8ビートを基調とした、ごくシンプルながらよく引き締まった厚みのあるアンサンブルはむしろ、ガレージロックの系統に近いクラシカルで通好みな仕上がりだ。作詞・作曲を担う紅一点のオニザワマシロ(Vo・G)は、バンドの存在を知らしめた“可愛いユナちゃん”のような病み系から、最新EP『う、ちゅー。』に収録された“オーストラリアでコアラ抱っこするまで死ねない”や“美術館へ行こう”あたりのシュールで散文詩的なリリックまでを自在に操るだけでなく、ボーカリストとしてもかなり個性的。平坦なテンションをキープしつつ、ところどころに滲む生々しい情念を整然としたロックサウンドの上に浮かび上がらせている。
2025年は新宿LOFTでの初ワンマンをソールドさせ、“おとなになったら”(これがまたエモいコードと泣きメロ炸裂のバラードソングなんである)が映画『やがて海になる』主題歌に起用されるなど、まさにステップアップの真っ只中。おまけに新作の一部楽曲ではShiggy Jr.の原田茂幸をサウンドプロデューサーに迎え、キラキラしたシンセポップにも接近していたりと、さらなる進化の兆しも随所に感じられるのだ。とにかく、あらゆる面でギャップと意外性だらけ。この超☆社会的サンダルなるバンドの輪郭は、一曲再生してみるごとに流動的になっていく気すらするのだが、2026年も注視しなければならない存在の一角であることだけは確定的と言えそう。
文=風間大洋
(『ROCKIN'ON JAPAN』2026年2月号より抜粋)
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