04年に再結成し、以来、ツアー・バンドとして活動し続けているピクシーズ。現在でも09年から続けてきた1989年の傑作『ドリトル』の完全ライブ・ツアーを世界的に継続中だが、ニルヴァーナのカート・コバーンも自身が受けた最大の影響としてピクシーズを挙げていただけに、新作制作を待ち望む声も大きい。
今年は早くも1991年にリリースされた最後のアルバム『トゥロンプ・ル・モンド』の20周年にもあたるが、これまでバンドにお願いだから新曲を書いてくれとせがんできた人の中にはU2のボノも含まれるという。
スピナーとのインタビューに答えて、ギターのジョーイ・サンチャゴはこう説明している。「ボノにまで言われてるんだよ。『お願いだから、新作作ってください!』っていう調子でね。こんな願いを聞き入れないわけにはいかないよ。ぼく自身がもう欲求不満でどうにかなっちゃうからね。ぼくはもうやるべきだと思う。でも、みんなの気持ち次第なんだよ」。
ドラムのデヴィッド・ラヴァリングはバンドとしては再結成してからツアーをすることで充分に満足しているし、ツアーそのものがほぼノンストップで常に行われるものにもなってしまっているとも語っている。そして、ジョーイは新曲を書くとなるとどうしてもバンド内に「摩擦」が起きることも想像しなくてはならないと説明していて、そこが難しい一線なのだと語っている。
デヴィッドは「ぼくたちとしてはツアーするだけでも嬉しいし、みんながぼくたちのことを観たがってくれているせいで、もうノンストップでずっと続けているわけなんだ。新曲についてはもう何年も話し合ってきてもいるけど、結局、なにも実をつけていないからね」と語っている。
ジョーイは「一度だけぶっちゃけたことを言わせてもらうけど、やっぱり全員が頭のどこかで新曲をやることはバンド内に摩擦を起こすかもと怖気づいているんだと思うよ。そう思わない? ひょっとしたらひょっとするかもしれないわけで、そのひょっとは、『やっべー、なにをまたやらかしちゃったんだろう?』ってものになりかねないんだよな」と語っている。
デヴィッドはこれまでの作品の系譜を尊重して、やるからにはいい作品にしなければならないし、再結成後のツアーも7年やっているとなると、ますます新作は作りづらくなってきていると説明しつつ、ジョーイは結局、バンド内で起きるやもしれない「摩擦」こそがいい方向に音楽を導くものなんだと語っていて、「キンクスのレイ・ディヴィーズが曲を書くために弟と殴り合いのケンカをしたとか、そういう摩擦をぼくたちも過去にはずっと利用してきたはずなんだよね」と説明している。
いずれにしても、ピクシーズの次のステップを考えた場合、新作制作はもう避けられないかもしれないとジョーイは語っている。「レコードを作るかどうかっていう話は今度はもう時期が時期だけにどうしても前面に出てきちゃうはずだよ。ぼくたちはユニットとしてはもう確実にひとつに溶け込んだところがあるし、もし全員が過去の痛みを全部葬り去ることができた時がきたら、もうぼくは確実にそれができてると思うけど、そうしたら、またあの現場に全員で入って、最善を尽くすしかないよね」。
(c) NME.COM / IPC Media 2011