名匠マーティン・スコセッシによるジョージ・ハリソンのドキュメンタリーとして注目を浴びた『ジョージ・ハリスン/リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』。このドキュメンタリー作品中に使われ、DVDやブルーレイのデラックス・エディションにCDとして収録されていたジョージの数々のデモ音源が単独のCDとして5月1日に『Vol. 1-Early Takes』としてリリースされた。
もともとドキュメンタリーの方は残された映像記録などをすべてジョージの妻のオリヴィアがスコセッシ監督に託して製作されていったが、それと併行してオリヴィアはジョージが遺した膨大な音源をビートルズのプロデューサーとして有名なジョージ・マーティンの息子でやはりプロデューサーのジャイルスと整理していったとか。
オリヴィアとジャイルスはある程度音源を整理していっては定期的にスコセッシ監督のもとに送っていたが、映画の方が完成に近づいてくるのにあわせて、自分たちも素晴らしいトラックのコレクションを掘り出していたことがわかって、せっかくなので今回もCDリリースしてみたのだとジャイルスは語っている。
特にこうした音源がかなり制作のうちのかなり初期の段階のものだったことにスコセッシ監督も興味を示していたとオリヴィアは次のように語っている。
「"マイ・スウィート・ロード"などでは『テイク・ワン』って言っているのが入っているくらいで。マーティン(・スコセッシ)は曲を書くというクリエイティヴなプロセスにものすごく興味があったみたいなのね。でも、マーティンが自分の映画の一番最初のカットを公開したがることは決してないんでしょうけど。それっておもしろいと思わない? なかなか思いつかないことよね」
また、オリヴィアは家族としてジョージのソングライティングの現場を見られたのは稀有な経験だったと語っていて、まさにその場でなんの前触れもなく生まれるものだったと語っている。作品によってはオリヴィアも音源を通して今回初めて聴いたものだが、「こうした初期のテイクを聴いてみて、わたしもまた、なにかが生まれてるって経験できたの」と説明している。「まだまっさらで、手が加わってなくて、なんの拘束もされてない、ほとんど考えとかは入ってないもので、ただ純粋なままだっていう。こうした音源をリリースしたいのは、ただそのためになの。とても美しいし、温もりがあって、いろいろわからせてくれるからなのね」
その後、ボブ・ディラン、ロイ・オービソン、トム・ペティ、ジェフ・リンらと組んだトラヴェリング・ウィルビリーズについてはものすごく楽しそうだったとオリヴィアは回想しているが、ただ、ジョージのソングライティングに関しては常にいきなり閃くという性格のものだったので、他人とのコラボレーションはなかなかうまくいかない様子だったオリヴィアは語っている。
また、作業はジョージのフライアー・パーク・スタジオで行われたが、オリヴィアとジャイルスは1年半かけてドキュメント用の音源を探し出すのではなく、ほとんどの音源の整理を同時に進めたそうなので、将来的にはさらなるリリースもありえるだろうと語っている。
『Vol. 1-Early Takes』のトラックリストは以下のとおり:
1. My Sweet Lord (demo)
2. Run Of The Mill (demo)
3. I’d Have You Any Time (early take)
4. Mama You’ve Been On My Mind (demo)
5. Let It Be Me (demo)
6. Woman Don’t You Cry For Me (early take)
7. Awaiting On You All (early take)
8. Behind That Locked Door (demo)
9. All Things Must Pass (demo)
10. The Light That Has Lighted The World (demo)