メニュー




毎度毎度ディープなアクトでロックファンをしびれさせてきたGRAPEVINEは、今年でなんと9回目の登場! いつか観たアメリカの古いロードムービーを彷彿とさせる伸びやかで自由なGRAPEVINEサウンドは、1曲目の“疾走”から健在だ。続く“超える”“NOS”も夏の夕暮れにぴったりで、エモーショナルな演奏と田中のヴォーカルが絡んで空に抜けていく。“Pity on the boulevard”はセンチメンタルに、「なつかシングル」“白日”は疾走感たっぷりに……と、楽曲ごとに様々な表情を見せるアクトはお見事。MCでは「ゆるりと楽しんでください」と田中が言っていたが、出てる本人たちが一番気持ちよさそうなのがフェスのGRAPEVINEであるからして、今回も微笑みながら歌う田中の姿が印象的だった。オーディエンスもラストの“Glare”まで心地好く身を任せていて、なんだかロックの贅沢な楽しみ方を教わった感じだ。この安定感と間違いのなさは、12年というバンドの歳月が蓄積してきた自信によるものなのかもしれないが、思えばデビュー当時からかわいくないバンドだった。いくらでも深読みできる文学的な歌詞に、完成度の高い楽曲群(しかもメンバー全員曲を書ける)を持ち、老成していると言われ続けて早12年、それらの核はそのままに、どんどん大きな器を見せていくバンドは他に類をみない。また来年もレイクの番人役、よろしくお願いします。(上田智子)