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いよいよKREVAがここひたちなかのステージに、「ひとり」立つ。ぐっさんの飛び入りというサプライズな出来事が終わっても、グラス・ステージ前方には沢山の人が集まってそれを待ち構えていた。キック・ザ・カン・クルーが活動を休止してからわずか2ヶ月。ソロ・アーティストとして再スタートをきったKREVAが、ここロック・イン・ジャパンのグラス・ステージにて初のライヴを行うのだ。最前列のお客さんは期待と不安の入り混じったような表情になっている。

それにしても、キックの活動休止が決まってからKREVAの見せたステップは鮮やかすぎるほどだった。6/18には自身のレーベルからソロ・デビュー・シングル“希望の炎”をすぐさまドロップ。ヒップホップという枠にとらわれない柔軟なトラックメーカーとしての才能と、その「歌」の底力を見せつけた。そして、もうすでにアルバム1枚分の楽曲分はとっくに出来ているというKREVA。このグラス・ステージは、その全貌が初めて露わになる場所でもあるのだ。

ステージにはキックでお馴染みのDJ SHUHOがまずは登場。そして、「ひたちなかの太陽、俺がかわりになってやろうかー!?」との叫び声と共に、いよいよKREVAが現れた! KREVAは男女8人のダンサー、そして昔からの盟友CUEZEROを引き連れての登場だ。シンプルではあるけれど強力なドラム・ビートの上で2MCが掛け合うヒップホップ・チューン“DAN DA DAN”で、フィールドを埋め尽くすお客さんを一気に引き寄せる。さらにヒップホップど真ん中のパーティ・チューン“ファンキーグラマラス”では、レイク・ステージで素晴らしいライヴを終えてきたばかりのライムスター、Mummy-Dが登場! まだ誰も聴いたことのない曲だっていうのに、会場中から「マジでハンパない!!」のコール&レスポンスが沸き起こっていた。さすがは「盛り上げる」ことにかけては無類の才能を持つ男KREVA。一人でステージに立つのは勝手が違う――なんてMCでは言ってたけれど、あっという間にグラスの巨大なステージを掌握してしまっていた。

しかしそのソロ・アーティストとしての真価が露わになったのは、さらに後半の展開だった。ステージに女性ダンサー4人とDJ SHUHOだけを残し、レゲエ・チューン“BABY DANCER”を歌い上げる。そして女性シンガーSONOMIをフィーチャーしたスウィートなR&Bナンバー“一人じゃないのよ”。KREVAのガッツ溢れるライミングに、SONOMIの包み込むような歌声が広がる。さらにはメジャー・デビュー・シングルになるという“音色”。ラップではなくじっくりと歌い上げるラヴ・ソングだ。研ぎ澄ましたリズムに抑えたセンチメンタリズムを滲ませたトラックに、心のひだを赤裸々に現したリリック。その情感が心にじかに迫ってくる。それこそがソロ・アーティストKREVAの本当のスタート地点なのだろう。

“音色”が終わると、SHUHOも去って、広いステージには本当にKREVA一人が残された。「どうだ! 俺は丸腰だ! 撃ちてえなら撃て! ……でも、その前に届けたい歌があるんだ」と、最後に、KREVAはアカペラで“希望の炎”を歌った。何の伴奏も演奏もなく、しん、とグラス・ステージ中に静寂が広がるなか、KREVAのとてつもない大きさの声だけが響き渡った。その時に感じた感覚はは素晴らしい、とか凄い、とかじゃない。ちょっと、身震いするくらいの感覚だった。
ソロ・アーティストとしてのKREVAの、本当の意味での始まりとなったこの場所。居合わせた全てのお客さんも、きっと彼自身も、忘れられない時間になっただろう。そう確信した。(柴那典)

1. DAN DA DAN
2. ファンキーグラマラス
3. BABY DANCER
4. 一人じゃないのよ
5. 音色
6. 希望の炎