シュレンドルフ13年ぶりの日本上映作『シャトーブリアンからの手紙』本日公開

シュレンドルフ13年ぶりの日本上映作『シャトーブリアンからの手紙』本日公開

好評公開中の『悪童日記』と並び、今観るべき「ハリウッドが作れなかった名作映画」のひとつ『シャトー・ブリアンの手紙』。『ブリキの太鼓』でおなじみのシュレンドルフ監督の、13年ぶりの日本公開となる作品だ。


ナチ占領下のフランス、ドイツ将校が暗殺された報復としてヒットラーは収容所のフランス人150人の銃殺を命じた、という史実を描いた本作。ものすごく重い作品なんだろうと覚悟していたが、過剰にドラマティックな演出はなく、日々の生活を丁寧に映したようなたんたんとした描写に驚いた。

主人公のモケは、ナチスドイツに批判的なビラを撒いて投獄され、この事件に巻きこまれ銃殺された17歳の少年。その後、フランスではレジスタンスの象徴となり英雄扱いされた。2007年サルコジ大統領は、フランスのすべての学校で10月22日、モケが銃殺された日に彼の遺書を朗読するよう強制的な指示を出し、国民からは大批判されたが、今でも自主的に彼を追悼している人は多いという。そんな象徴的人物をドイツ人監督であるシュレンドルフが描くことで、物議をかもしだすのではと友人の監督はとめたそうだが、シュレンドルフはむしろ、彼を英雄としてではなく普通の少年として描きたかったそうだ。それによって、他の犠牲者を忘却から甦らせ、また上からの命令を拒否することができない人のことにも興味があったという。


銃をかまえたドイツ兵に向かって、フランス人がドイツ語で“インターナショナル”歌う場面、そして「命令の奴隷になるな。良心の声を聞け」という牧師の言葉は胸に刺さる。
アイヒマン裁判について「凡庸なる悪」の罪深さを描いた 『ハンナ・アーレント』同様、多くの人が観るべき映画だ。(井上)
http://www.youtube.com/embed/mi-9rb1iEQc
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