ストーリーもシチュエーションもできる限りそぎ落とされ、福田作品の真骨頂のひとつである「かぶせ」とアドリブの応酬をひたすら純粋に楽しめる。これまでの彼の映画の中でもっとも、福田雄一の原点にある表現が爆発した作品だろう。
笑いとイラつきのツボをじわじわとこねくりまわしてくる「頼りにならないやつら」の中でも、福田組おなじみのムロツヨシ、佐藤二朗のしつこさはもはや名人芸だ。そして、迫るリミットにどんどん逃げ場をなくしていくホストのナオキを演じるのが、福田監督作初出演の菅田将暉。数々の愛すべきダメ人間を演じてきた菅田だけに、そのヘタレさと切迫感はさすがだが、福田演出においてその迫真のダメっぷりは、追い込まれれば追い込まれるほど「かわいそう(笑)」な面白さ。福田雄一との出会いが生んだ、新しい菅田将暉をまた見てしまった。
ちなみに、明日3月19日発売のCUT最新号には、「少年時代」を語る菅田将暉のインタビューと撮り下ろし写真、そして少年の頃の秘蔵写真も掲載していますので、ぜひそちらもチェックしてみてください!(川辺)