ネット犯罪が横行する今ならではのキャッチーな物語ではあるが、事件を追う警察と彼らの攻防のスリルだけでなく、器用に生きることができない者たちの悲しみと怒りを丁寧に描くのは、中村義洋監督ならでは。若者が時代の犠牲になっているとか、リアルで満たされない者たちの鬱屈とか、そんな単純な言葉では片付けられない日本の今を、やりきれないほど切実に伝えている。
おそらく私は予告犯グループと同世代。期待とともに社会に出て必死に働いて数年、壊れてしまったり大きく失ったりすることはなくても、これまで何を得てきたのだろうと立ち止まり、社会ではなく自分が悪いのだと途方に暮れる苦しみはわかる。でもこの作品がすごいのは、その苦しみにひたすら寄り添うだけでなく、それも甘えだと言い切る視点もしっかり存在すること。それでも、「誰かのために」という生きる目的を見出した彼らは、誰よりも強く、幸せだったのかもしれないと、予想していなかった種類の余韻が残った。公開は、6月6日。(川辺)