一昨日公開されたタランティーノ9作目となる新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』。観た方は、まだ余韻に浸っているのではないでしょうか。
今作は、タランティーノ作品の中でも、かなりセンチメンタルな気分になる映画で、というのも「時代」や「時間」という不可抗力な敵に向き合っているから。暴力で焼き尽くすわけにはいかないのだ。
1969年、ハリウッド。時代に取り残された元テレビ・スター、リック(レオナルド・ディカプリオ)と、長年彼のスタントマンを務めた相棒で元兵士のクリフ(ブラット・ピット)。そこに、時代の寵児であるロマン・ポランスキー監督とシャロン・テート(マーゴット・ロビー)というセレブ夫婦や、ラブ&ピース幻想を終わらせた凶悪犯チャールズ・マンソン・ファミリーが絡み合い、一触即発のドラマを生み出していく――。
タランティーノの集大成的ともいうべき映画愛に溢れた本作について、CUT9月号で監督は以下のように語っている。
これまでの映画でも、歴史の出来事を扱いつつも、ファンタジーの要素をくわえることをやってきている。(中略)
この映画を撮るにあたって、私はあえて歴史の制約に自らを追い込み、同時にその制約に制限されないようにしたつもりだ
つまり彼自身が育った「1969年のアメリカ」について、こうだったらいいのに…という想いもこめて描かれているのだ。
一方ディカプリオは、
ハリウッドとはぼくの存在そのもの
と語り、ブラット・ピットは自ら演じた「スタントマン」という役割について、このように発言している。
スタントマンに尊敬の念を抱いているよ。なにしろ、彼らが体を張っているときに、ぼくはトレーラーにいるわけだから(笑)。
ぼくは友人のトム(・クルーズ、『ミッション・ポッシブル』)と違って、それでまったく問題ない(笑)
ハリウッド2大スターの長編初共演!と騒がれたレオとブラピのバディは想像以上に愛しいが、アル・パチーノ、そして『ヘイトフル・エイト』での名演も忘れ難いブルース・ダーンの登場にわくわくする。そしてシャロン・テート役のマーゴット・ロビーが完璧すぎて誰もが虜になる。
ストーンズの“ペイント・イット・ブラック”やサイモン&ガーファンクルの“ミセス・ロビンソン”など、時代感をエモーショナルに演出する音楽も聴き逃せません。(井上貴子)
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