なかでも1曲目“Next Stage!!”で、ラップによる6人のメンバーそれぞれの自己紹介と、《新時代の挑戦者》と決意表明が歌われた瞬間、早々にこみ上げたリスナーも多かったと思う。
3月21日に予定されていたナゴヤドーム公演の延期と同時発表された、初の生配信ライブ。「がっかり」を「楽しみ!」に変えようと、数週間で準備を整え同じ日にZepp DiverCityでの無人ライブを敢行。最高時の同時視聴者数は約24万人と本来ならライブを観ることのできなかったはずの多くの人たちが、一緒にライブの時間を共有した。
困難や理不尽を必然へと変えていくアイディアとバイタリティはとんでもないが、常にその核には「リスナーを楽しませたい」というエンターティンメントを担う者としての矜持がある。
ツイキャスの生配信など、ネットを通じたコミュニケーションは百戦錬磨の6人だけに、「スマホに向って言ってみて」といったコール・アンド・レスポンスも自然で巧み。しかしそれにもまして、物理的空間を超えて繋がろうとするお互いの熱量に、リスナーとすとぷりとの絆がより強まったのは間違いない。
あの手この手で顔を隠す技術を使って、普段が10としたら150くらいの機材がある、とななもり。は自らMCでネタばらししていたが、多彩なライティングや映像、ステージ上の6人と向き合った形でのバンド演奏、ナゴヤドームで使うはずだった巨大モニターを持ち込みそこにツイートを映すなど、演出面での創意工夫はたくさんあった。
しかしそれ以上に、ニュー・アルバム『すとろべりーねくすとっ!』の収録曲が、生で初披露されたことが今日のライブの大きなポイント。“GO GO CRAZY”や“僕らだけのシャングリラ”などこれまでもパーティ・チューンは多いが、今作はさらにEDMやラップ・ミュージックなどライブで盛り上がること必至の曲も多い。もちろん、次のお楽しみのために、全曲披露ではないところも彼ららしいが。
デュエット・コーナーを経た後半、“ストロベリー☆プラネット!”“大好きになればいいんじゃない?”のあと、メンバーそれぞれがじっくりとリスナーに想いを伝え、その後、本来はナゴヤドームで発表するばずだった「夏の東京ドーム ワンマンライブ」を告知した。
「僕たちは基本、できないことばかりなので、みんなでやろうと決めたら、とにかくやってみるということを大事にしています。生放送にしても、最初、僕ところんくん以外は経験がなかったし、(中略)みんな得意なことが違うので、みんなの知識を持ち寄って、今のすとぷりがいるので」
――CUT最新号でのインタビューで、ななもり。はこのように語っていた。
新しいことに挑戦する試行錯誤のドキュメンタリーこそが、すとぷりというエンターテインメントの面白さであり魅力なのだと、今日のライブ配信を観て改めて思った。そしてその羅針盤の針は、リスナーがわくわく喜ぶようなときめきを常に示している。
平穏な日常生活がとりわけ難しい今だからこそ、「楽しさ」を懸命に生み出そうとするすとぷりの努力がよりいっそう輝き、これが「ぷりんす」と名乗る覚悟なのだと思い知らせた。(井上貴子)
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