「観ればわかる」映画が勝つ

「観ればわかる」映画が勝つ

期待の新星女優・能年玲奈を表紙に据えた『あの娘は誰?――ヒロイン登場の奇跡、その20の瞬間』号は明後日9月19日発売です。
これは、その号に載っている編集後記です。
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 今夏、日本で公開された映画で特に活躍が目立ったのは、洋画『アベンジャーズ』、邦画『るろうに剣心』、アニメ『おおかみこどもの雨と雪』などだった。『おおかみこども~』に関しては、同日公開のピクサー映画『メリダとおそろしの森』を圧倒したのも印象的だった。『メリダ~』も良い作品で、アメリカではヒットしているが、いつものピクサー作品よりも毒の部分が薄く、その分だけファミリー層に受け入れやすいかとも思われたのだが、日本の観客は「自ら生き方を選ぶ」という実は『メリダ~』とも共通するテーマを、もっと生々しく描いた『おおかみこども~』を選んだ人が多かった。日本の観客がいつものピクサー映画に求めるような毒の部分がむしろこちらにあったのである。
『アベンジャーズ』と『るろうに剣心』のヒットは、似ていた。別にアメコミヒーロー映画や人気コミックの映画化であれば間違いなくヒットするわけではない。『アベンジャーズ』に登場するヒーローは日本人には馴染みが薄過ぎるとも言われていたし、『るろうに剣心』ほどの大人気コミックの映画化となるとむしろ原作のファンによってかなり期待のハードルが高くなるとも言われていた。しかしこの2作品は、圧倒的勝利を収めた。勝因は、両作品とも「面白くて、カッコ良くて、斬新な映像やアクションを観せてくれて、総合的に感動的だった」からである。もちろん、元となっている作品やキャラクターが持っているものあってのそれだが、結局、重要なのはコンセプトではなくて中身なのである。
 ヒットした作品は叩かれやすい。『アベンジャーズ』も『るろうに剣心』も観てない観客による、中身ではなくコンセプトを槍玉に上げた批判をよく目にする。『アベンジャーズ』のジョス・ウェドン監督も先日「完璧な作品ではないが観た上で批判してほしい」とコメントしていたが、これは謙虚な言い回しながら「観ればわかる」映画を作った自信の表れだ。「楽しむために映画を観る」という観客の健全な心にまっすぐ応えられる作り手が勝つのだ。(古河)
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